一度決壊したダムは、もう二度とせき止めることなどできなかった。
私とお義兄様の身体の相性は、言葉を選ばずに言えば、異常だった。
凹と凸。
鍵と鍵穴。
そんなありふれた比喩では追いつかない。
私の膣内のひだの一つ一つが、お義兄様の剛直の形を記憶している。
彼が侵入してくるだけで磁石のように吸い付き、離そうとしない。
彼氏の奏多とのセックスは、台本をなぞるようなわざとらしい「人工的」な演技の『アーティフィシャル・セックス』だった。
一方、それに対してお義兄様とのセックスは、呼吸をするように「自然(ナチュラル)」で、溺れるように苦しい本能の行為の、いわば『ナチュラル・セックス』。
ん、チュ、じゅる……ッ。
「は……結愛、いい舌の動きだ……」
今日の私たちは全裸で互いの秘所を顔の前に晒し合い、貪り合っていた。
私の顔の上には、赤黒く勃ち上がったお義兄様の雄があり、彼の顔の上には、愛液で濡れそぼった私の雌がある。
私は夢中で彼の竿を舐め上げた。
裏筋の血管、カリの張り、独特の匂い。
そのすべてが愛おしく、美味しい。
同時に、下からはお義兄様の巧みな舌が、私のクリトリスを執拗に攻め立てている。
(あッ、んぅ! お義兄さんの舌も、すごいぃ……ッ!)
上と下からの快感で、脳が溶ける。
私たちは人間としての尊厳を捨て、互いの体液を啜り合う獣に成り下がっていた。
彼に抱かれるためならプライドも恥じらいも捨てた。
ある夜、彼は私に一着の衣装を渡してきた。
丈の短いナース服のセクシーなコスプレ衣装だった。
「着てみろ。俺専属の看護師なんだろう?」
お義兄様からのマニアックなリクエスト。
でも私は嬉しかった。
下着をつけずにナース服一枚だけを羽織る。
動くたびに裾から秘部が見え隠れする。
その煽情的な姿で、ベッドに座るお義兄様に跨った。
「患者さま。専属の看護師の結愛が、身体で癒してさしあげます」
自ら腰を沈め、彼を受け入れる。
ズプゥ……。
セクハラに耐えながら、真剣に働く看護師さんを冒涜するような、淫らなナース服でのセックス。
その背徳感が私の興奮をいっそう増幅させた。
お義兄様の肩に手を置き、腰を激しく上下させる。
「あッ、あッ、見て! 私、患者さんので、いっぱいになってる……ッ!」
騎乗位でお義兄様を見下ろす。
普段は冷静な医師である彼が、私の腰使いに理性を乱し快感に喘いでいる。
その顔を見られるのは私だけ。
私は彼を喜ばせるためなら、どんな淫乱な女にでもなれた。
場所さえ選ばなかった。
彼がしたいと言えば、ドライブ中の車内で、あるいはキッチンのテーブルで、私はすぐに膝をつき、ズボンのチャックを下ろして奉仕した。
いつでも、どこでも、彼を「癒す」準備ができている便利な濡れた穴。
それが私の存在意義になっていた。
とうとう、私は残る穴をも差し出した。
ある夜、バックで激しく突かれていた時、お義兄様の指が濡れた秘部の後ろにある狭い蕾を愛撫した。
「……結愛。ここも、俺にくれるか?」
「え……っ?」
「お前の全部が欲しい。汚い場所も含めて、すべて俺のモノにしたい」
お尻なんて。
そういう行為があるのは知っていた。
痛いし、汚いし、絶対に無理だと思っていた。
でも、お義兄様の昏い瞳に見つめられると、断ることなんてできなかった。
彼が望むなら。
彼が私の汚さのすべてを受け入れてくれるなら。
「……いいよ。お義兄さんの好きにして」
たっぷりとローションを塗られ、ゆっくりと異物が侵入してくる。
身体が裂けるような異物感と排泄感。
直腸の最奥まで穿たれた瞬間、背筋を突き抜けるような精神的な喜びで身体が痺れた。
「入っ、た、か?……全部、入ったようだな、結愛」
「……うん、お義兄さん! 全部、入ってるぅ……ッ!」
「初めてなのにすごいな……結愛、俺たちは身体の相性が良すぎる、なんでだろうな?」
――そんなの、運命だからに決まってる
お口も前も後ろも、私の三つの穴はすべてお義兄様に開発された。
私は涙と涎を垂れ流し、尻を振って彼を求め、彼にお尻の中でイッてもらって絶頂した。
激しい情事のあと、お義兄様の腕の中でまどろみながら姉のことを考える。
かつて、私は姉・紗香を軽蔑していた。
優しい夫のお義兄様がいながら、若い男との不倫に溺れ、家庭を壊した愚かな姉。
「だってしょうがないじゃない、身体の相性がばっちりだったんだもの」
臆面もなくそう言い放った姉を、汚らわしいと思っていた。
でも、今ならわかる。
痛いほど、わかる。
(お姉ちゃんも、溺れたのね……この抗えない泥沼に)
理屈じゃない。
倫理観や世間体なんて吹き飛んでしまうほどの圧倒的な快楽。
一度知ってしまえば、もう元のきれいな世界には戻れない。
私は、あんなに憎んでいた姉と同じ生き物に成り果てていた。
でも、後悔はなかった。
奏多との時間は、世間の同調圧力に引っ張られたまがい物。
お義兄様の体温に包まれている今、この瞬間が自然であり、ありのままの姿なのだから。
――伊織さん、愛してる
私は彼の寝顔に、音にならない声で囁いた。
それは契約違反の言葉。
けれど、もう止められそうもなかった。
私は何があろうと、どこまでも彼と一緒に堕ちていくことを、固く心に決めた。