Discipline3:『セックス合宿』での至福 第10話

「待たせたな、芽美」
 イヤらしいフレンチメイド服姿のナターシャさんとイチャイチャしていた拓海さんが、ようやく声をかけてくる。

―フェラチオさせられるのかしら?―
 でも拓海さんは口かせをはずそうとはせず、ナターシャさんに命じる。
「ナータ、あれを持ってきてくれないか?」
「かしこまりました、ご主人様サマ。」 

 倉庫に消えたナターシャさんが鞭を持って戻ってくる。先が幾重にも分かれたバラ鞭というやつ。鞭打たれることを覚悟する。一本鞭ではなくて少しだけほっとする。

「さきほど命令に背いた懲罰を与える。約束どおり刑を軽くして、一本鞭ではなくバラ鞭で叩いてやる。だが課題を実行しなかった場合、ナターシャによる5回の一本鞭打ち刑が追加されるから気をつけろ。」
 声を出せない私はコクコクとうなづく。
「それからもう一つサービスだ。俺かナターシャのどちらに鞭打って欲しいか選ばせてやろう。ただし俺を選べば10回、ナターシャなら5回だ。時間をやるからよく考えろ。」

 私はうつむいて考える。5回に比べて10回はたしかに多い。でもバラ鞭の痛みは一本鞭に比べたら遥かにましだ。拓海さんにバラ鞭で10回叩かれた経験ならある。泣いてしまうのは間違いないけれど、あれなら耐えられる。
 それに私のご主人様は拓海さん。その拓海さんの命令に背いたのだから、拓海さんに叩かれるのが筋というもの。拓海さんがナターシャさんを選んで鞭打たれるなら仕方ない。でも自分でナターシャさんを選んだら、彼女の奴隷ってことになってしまう。回数が半分なのは魅力的だけど、そんなことは断じて認めるわけにはいかない。

 顔を上げて拓海さんを見上げる。
「結論が出たようだな?」
 コクコク。
「ナターシャに叩かれたいか?」
 フルフル。
「俺に叩かれたいんだな?」
 コクコクッ。

「ほう、回数が多いほうの俺を選ぶとは、自分の立場がよくわかっていてよろしい。ナターシャを選ぶような馬鹿なら、俺が一本鞭で激しく打ってお前の身体に誰がご主人様なのか厳しく教え込んでやろうと思っていたが。お前の友人の話を聞いたりしていると、A女子短大生はバカなビッチばかりと思っていたが、25年間処女を守ってきて、大学卒業後も資格試験を受けて合格するようなお前は違うようだな。一途で努力家のお前ならフェラチオテクニックもすぐにマスターして、俺を十分に愉しませてくれるだろうしな。」

 私の出身校や処女暦の長さを揶揄しているのかと思ったら、真面目な顔で私の頬を優しくなでている。私を褒めているようだが言い方が酷い。とはいえ、選択は正解だったようでほっとする。

 バレンタインデーの夜、深夜の居酒屋で悪酔いしたとき、拓海さんに友人関係についてこんな愚痴をこぼしたことを思い出す。

―お金持ちの優しい彼氏から貢がれて大事にされているのに仕事が忙しくてあまり会ってくれないからと不満を漏らし他の男とデートしている子。彼氏とのセックスに満足できずにクラブや相席居酒屋で男漁りをしてセフレを作っている子。会社の受付嬢をしていて何人もの男から口説かれて複数の彼氏を作っている子。そんな友人がいる―

―そういう子たちの話を女子会で自慢するように聞かされる私には、話せるような恋愛経験がなく黙って聞いているだけ。正直悔しい。私も彼女達みたいにもてるようになりたい。でも私は彼女達みたいに可愛くないから無理。孝さんという一人の男とさえうまくいかない私はきっと一生独り身なんだわ―

 私の長々とした愚痴を我慢強く聞いてくれた後、拓海さんはこんな趣旨のことを言って慰めてくれたのだった。

―ひと昔前は処女を早く卒業したほうがかっこいい、みたいな風潮が確かにあった。しかし援助交際やネットを通じた出会いによる事件が大きな社会問題となって法的な規制と監視が強化されている―

―また10代で妊娠して出来婚するも、すぐに離婚してシングルマザーとなって苦労している女の子の苦しい生活の実態が保育所の待機児童問題や、若い女性の貧困問題を通して明らかになっている―

―それに加えて、いわゆる草食系の男子や女子、つまり異性との交際に関心を持たない若者や、興味があってもアニメやマンガ好きの世界の2次元限定の男女が増えている―

―そういうわけで今はそんな風潮は薄れている。そもそも昔だって隠していたけれど、実際には20代で処女の子も多かった。だから処女であることを気にすることは全然ない―

 そういうものかと少し元気が出た私に、続けてこんなことも。
―それに社会人になればだんだんと、そういう軽い女の子たちよりも、芽美ちゃんみたいな真面目で一途そうな子のほうが人気が出てくる。男も結婚を意識するようになるからね―

―その子達も今の彼氏に満足していないからそういうことをしているのだろうから可哀想だと思えど別に羨ましくはならないだろう?―

―孝くんとこれからどうなるかわからないけれど、芽美ちゃんは自分で思っている以上に魅力あるから大丈夫!芽美ちゃんを自分のものにしたいって男が必ず現れるさ―

 あのときは口説かれているのかと思った。あのまま誘われていたら、自棄になっていた私は無言でついて行って拓海さんとホテルで一線を超えていたのは間違いない、一夜の過ちってことで。
 でも拓海さんは弱っている私の心につけこもうとはせず、紳士的に送ってくれた。それで私は拓海さんを信頼し好意を深めたが、今思えばそれも作戦だったのだろうか。部屋の準備などを考えれば、あの頃から私を自分のセックス奴隷にしたいと考えていたはずだから。

 そんなことをつらつら考えていたら、拓海さんがこんなことを言ってきた。
「それとも俺に鞭打たれるのが好きなのかな、ご主人様が大好きなマゾ牝奴隷は?」

 薄笑いを浮かべているところをみると、今度こそ私を揶揄しているのだろうか?媚びを売って首を縦に振るほうがいいのか、はっきりそうではないと横に振るほうがいいのか迷う。
 そんな私に拓海さんが続けて問う。
「俺にバラ鞭で10回打たれるのと、スパンキングを100回されるのなら、どちらを選ぶ?」

 バラ鞭1回がスパンキング10回分てこと?前のときみたいに優しく叩いてくれなくてもスパンキングのほうが楽だと思う。でも自分の立場としては鞭を選ばなくてはいけない気がする。ああ、でも拓海さんがご主人様ってところを間違えなければいいのかな?今回はどちらを選んでも拓海さんに叩かれるわけだし。

 でも奴隷としては自分が楽をすることよりもご主人様の意に沿う答えをしなければならないのかな?拓海さんはどちらを選ばせたいのだろうか?わからない。口が聞ければご主人様のお好きなように、と答えて誤魔化せるのに・・・。

「バラ鞭10回?」
 私は首を動かさない。

「スパンキング100回?」
 これにも私は首を動かさず、拓海さんに結論を委ねる。

「ふむ、選べないようなら両方にするか。」
 私はあわてて首をブンブンと横に振る。拓海さんはそんな私を見て笑う。酷い。

「冗談だ。選べないなら前と同じゲーム形式にしてやろう。鞭を持っている手が右手か左手か選ぶやつだ。ただし前回は鞭10回かスパンキング10回の選択だったが、今回は鞭1回かスパンキング10回の選択だ、楽なものだろう?おまけに鞭を選んでしまっても気持ちよくなれるように1回につき10分間の愛撫をつけてやる。だから気楽に選べ。」

 拓海さんがなにを考えているのかわからないけれど、ずいぶん楽になった。ほっとして、承諾のしるしに首を一度縦に振る。

「その代わり、鞭の痛みをはっきりと感じるよう、目隠しだけでなく耳も塞がせてもらうし口枷もそのままだ。乳首を引っ張られたら首を右か左に向け5秒ほど静止しろ。俺が尻を触ったら首を戻して前を向いて答えが身体に文字通り叩き込まれるのを待て。」

 視界が塞がれ、耳にはヘッドフォンのようなものがかぶせられる。何も見えず、ほぼ何も聞こえなくなって、どきどきする自分の心臓の音だけを感じるようだ。

 1回目。拓海さんが右の乳首を撫でる。ちょっと考えて首を左へ向け心の中で5秒数えて戻す。緊張して身体に力が入る。

 パッ。スパンキングだ良かった、と思ったら右の耳カバーをはずされる。
「力を抜け!力をいれていると鞭のときに痛さが増すぞ。」
 右耳カバーが戻される。私は意識して身体を弛緩させる。

 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ。
 力の抜けた柔らかい尻肉がプルプルと9回振動し、小気味良い破裂音を身体から直接感じる。これならやはり痛くなかった。一本鞭と比べたら、そよ風に撫でられているようなものだ。

 2回目。左の乳首が撫でられ、試しに同じ左方向へ向いてみる。忘れずにお尻の筋肉から力を抜く。

 バシィッ。体内を通して鋭い音が耳にとどく。
 今度はバラ鞭だ。それでもやはり一本鞭と比べたら楽なものだ。しかも1回だけ。さて愛撫ってどんなことをされるのかしらと思っていたら、ヴァギナにヌルリとした柔らかい感触を感じる。拓海さんの舌のようだ。どうやらクンニリングスをしてくれるみたい。

 乾いている私の女性器を拓海さんの舌がゆっくりとまんべんなく這い、全体を丁寧に湿らせていく。大陰唇、小陰唇、陰核、膣口内。10分間は長く、終わる頃には私の秘所は拓海さんの唾液で濡れ濡れになり、私も感じ始めてしまう。拓海さんの舌が離れるのが名残惜しい。

 3回目。右の乳首が撫でられる。右を向く私。

 バシィッ。
 どうやら今回の答えも簡単で、触った乳首と同じほうの手に鞭を持っているようだ。そして10分間のクンニリングスが始まる。ピチャピチャと私の秘所を拓海さんの舌が這い回り、10分経過する頃には鞭の痛さを完全に忘れさせてくれる。

 4回目。左の乳首が撫でられる。鞭を避けるために今度は右を向く。

 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ。
 10回の小気味良いスパンキング。私にとっては気持ちよさを感じてしまうレベル・・・なのだが、クンニリングスの快感には劣る。

 5回目。右の乳首が撫でられる。どうしようか悩んでいると返事を催促するように、右の乳首がキュッと捻り上げられる。ゲーム開始時には慎ましかった乳首も、勃起して激しく自己主張してしまっているのだ。

「うっ」
 予期しない痛みに呻き声をあげ、思わず反射的に左を向く。

 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ。正直、気持ち良い・・・・けれどなんというか、もどかしい気持ちよさだ。

 6回目。左の乳首がつねられる。迷いながら首を左へ振り、自ら鞭を選ぶ。

 バシィッ。
 そして始まる10分間の悦楽の時。クンニがいつもより気持ちが良いのは、快感メーターがゼロからプラスではなく、痛みのマイナスからプラスになるだけ大きなギャップがあるからだろうか。嵌ってしまいそう。

 7回目。右の乳首がつねられる。迷いなく首を右へ。

 バシィッ。
 この痛みもクンニの快楽を高めてくれる重要なスパイスだと思うとイヤではない。拓海さんの舌が私の愛液を潤滑油として秘所を暴れまわる。私はボールギャグの隙間から動物のような悦びの喘ぎをもらす。
「ウッ、ウッ、ウッ、ウッ、ウッ♡」

 8回目。勃起した左の乳首がギュッと捻られる。首を左へ。

 バシィッ。
 痛いはずなのに、クンニの快感を予期して膣襞がドロリと愛液を放出する。あふれ出るラブジュースを拓海さんがジュルジュル吸っている。恥ずかしい、でも嬉しい。高まる嬌声。
「ウウッ、ウウッ、ウウッ♡」

 9回目。右の乳首が摘んで引っ張れ、乳房がギュウギュウと揉みしだかれる。わけがわからなくなって間違って首を左に振ってしまい、あわてて、右へ振る。

 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ。
鞭を予期していたところへスパンキング。想定外の甘い痛みに思わず大きく喘いでしまう。
「ウウーッ、ウウーッ、ウウーッ、ウウーッ♡」

 そして鞭。
 バシィッ。
 もはや痛いのか気持ちが良いのかわからない。叩かれる刺激で愛液が溢れ出すのだから身体はそれを快感を判断しているのだろう。拓海さんの口がクリトリスに吸い付き、舌の先端でチロチロとつついたり舌を回転させて女の一番敏感な箇所を責めたてる。私は首を左右に振り、手を握り締め、鼻を鳴らし、動物のように唸り、拘束された不自由な肢体を揺らして快楽に浸り、ご主人様に悦びを表現する。
「フーッ、フーッ、フッ、フッ、フフーッ♡」 

 10回目。左の耳カバーがはずされ拓海さんが甘くささやく。
「一度、絶頂させてやろう」
 両乳首が指の間に挟まれ、両方の乳房全体が手のひらで覆われ、痛いほどの強さで激しく揉まれる。
―拓海さんも興奮してるんだわ―
 その強さに彼の興奮を感じて嬉しくなりながら、コクコクと首を縦に振る。

 パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ、パンッ。
 スパンキングの甘い痛みが私を柔らかく切り分ける。

 バシィッ!
 バラ鞭のスパイスが私にふりかけられる。

 クチュ、クチュ、クチュ、クチュ。
 拓海ご主人様の舌が私をトロトロに煮詰めていく。

 ジュブッ、ジュブッ、ジュブッ、ジュブッ。
 私の中に挿入されたご主人様の指がGスポットを擦り、私を快感の強火で煽る。
「フフーッ、ウウーッ、フウッ、フウッ、ウッ、ウッ、ウッ、ウッ、ウッ♡」
 目を塞がれているのに目の前がチカチカする。身体が浮遊する感覚。

―あっ、もうイっちゃいそうです、拓海ご主人さまっ―
 そう思った直後、拓海ご主人様の指が抜かれ。

 ピシーッツ!
 尻肉を切り裂くような鋭い痛みが、最後のフランベとなって、私の肢体から絶頂の業火を燃え立たせる。

「ウ、ウ、ウッ、ウウウウウウウウウウウウウウウウウーッ♥」
 暗闇の中で目を見開き、しかし何も見ていない状態で、四つん這いに拘束された手足にギュッと力を入れて、背中を反らして首を上げ、狼が遠吠えするかのような姿勢で恍惚の咆哮をあげる。

 スパンキングとクンニリングス、それと鞭で迎えさせられた絶頂は、子宮口を突かれての絶頂とは違い、身体が浮遊したあとに快楽の谷底へバンジージャンプで突き落とされるような恐怖と興奮が表裏一体となった感覚だ。もう二度と経験したくないような、でもまた味わいたくなるような・・・。

 快楽の谷底を離れがたく彷徨(さまよ)っていると、耳カバーと目隠しがはずされ拓海さんが声をかけてきた。拓海さんの右手には一本鞭が握られている。

―最後のあれは、やっぱり・・・・― 
「一本鞭もそんなに悪くないだろう、芽美?」
 一本鞭で激しく叩かれて絶頂に達した事実に呆然としている私は反論することができない。快楽の谷底からゆるゆると這い上がりながら、心の中で自問する。
―わたしはやっぱりマゾなの?―

 しかし、その答えを考える時間は与えられなかった。
―え、なんなのっ?―
 お尻の穴に硬い何かが突き立てられて、そこから直腸内になま温かい液体がゆっくりと注入されるのを感じ、おぞましさに怯えと拒絶の叫び声をあげる。 
「ウウッ?!」

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