第3話:甘やかな檻

 春が過ぎ、梅雨の足音が聞こえ始めた頃。
 私とお義兄様の関係は、奇妙なほど穏やかで泥沼のように深く沈殿していた。

 週の半分を彼のマンションで過ごす生活。当初の治療という名目は、いつしか生活の一部となり、私はかいがいしく彼に尽くすことに喜びを感じ始めていた。

 約束だから。
 彼を癒やすためだから。
 そんな免罪符を胸に、私は夜ごと、女子大生としての常識を一枚、また一枚と脱ぎ捨てていった。

 ある雨の夜。
 お義兄様は背中の傷跡が引きつると言って、私を浴室へ呼んだ。
 指定された衣装は、彼が用意した純白のビキニだった。

「お義兄さん、失礼します」

 湯気が充満した浴室に、私の裸足の音が響く。
 布面積の少ない白いビキニは、私の豊満すぎる身体を隠しきれていなかった。

 細い紐が首と背中に食い込み、重たい乳房を辛うじて支えている。
 歩くたびに、たぷン、と柔らかい脂肪が揺れ、ビキニの縁からこぼれ落ちそうだ。
 くびれたウエストと、安産型だとからかわれたことのある広い骨盤。
 そこに乗る肉付きの良いお尻も、小さな三角形の布からはみ出している。

 湯船に浸かったお義兄様が、けだるげな瞳で私を見上げた。

 「ああ。いい眺めだ」

 彼は私の肢体を、まるで品評会に出された極上の果実を見るような目で舐め回した。
 白い肌に、白い水着。
 清潔で、淫らだ。

 私は恥ずかしさに太ももを擦り合わせながら、スポンジで彼の背中を洗った。
 筋肉質な背中。脇腹に残る手術痕。
 洗い終えると彼が突然振り返り、濡れた手で私の胸を鷲掴みにした。

「ひゃうッ!」
「濡れた水着が透けて、乳輪の色が見えているぞ」

 彼の指が、薄い布越しに尖った突起を摘んだ。
 快感と羞恥で濡れたタイルの上に崩れ落ちそうになった。

 数日後の夜。
 リビングのソファで、お義兄様が自身の昂ぶったイチモツをさらけ出した。
「今日は手で抜け。医学生が実習するように、丁寧に扱え」

 私はベビーオイルをたっぷりと掌に広げた。
 熱く、硬く脈打つ剛直を慎重に握る。
 最初はぎこちなかった。
 次第に彼の吐息と反応を観察しながら、気持ち良い場所を学習していった。

 カリの裏側のくびれ。
 裏筋に浮き出た血管。
 そこを指の腹でねっとりと擦り上げ、鈴口を掌で転がす。
 オイルでぬらぬらと光る私の手と、彼の猛々しいモノ。
 私の拙い愛撫で年上の義兄が理性を崩していく様を見るのは、背徳的な優越感があった。

「うまいぞ、結愛。……そうだ、そこだ」
 頭上から降る褒め言葉欲しさに夢中で手を動かし続けた。

 さらに一週間後。
 私は彼のリクエストで、トップレス姿でベッドに跨っていた。
 私の最大の武器である、Fカップの乳房を使うためだ。

 「お義兄さん……挟みます」

 オイルでテラテラに濡れた胸を寄せ、彼の竿を谷間に埋める。
 柔らかい脂肪のクッションが硬い肉棒を包み込む。
 上下に腰を動かすたびに、ヌチュ、クチュ、と卑猥な水音が寝室に響く。

 視線を落とせば、私の淡いピンク色の乳房に赤黒い雄が挟まれ、出入りしている。
 先端が喉元を突き、時折、私の顎を掠める。
 その光景の圧倒的な淫靡さに、私自身の秘部もキュンと疼き、愛液が太ももを伝い落ちていた。

「くっ、結愛……そのパイズリは効く……」
「もっと、してあげる……私でもっと、気持ちよく、なって……」

 私の胸はただの脂肪の塊ではなかった。
 男を狂わせる凶器なのだと自覚し、恍惚としていた。

 そして、ある蒸し暑い夜。ついに私は、自らの意思でそこに口づけをした。

 これまではずっと、お義兄様に命令されて仕方なくだった。
 最近は彼氏の奏多にキスさえ拒んでいる私が。
 義兄の股間に顔を埋め、獣の匂いがするそれを自分の意思で自ら進んで口内に招き入れたのだ。

 じゅぼッ。
 口いっぱいに広がる、圧倒的な質量と熱。
 舌を裏筋に這わせ、頬をすぼめてバキュームする。
 喉の奥を突かれる苦しさ。
 それ以上に、お義兄様の欲求のすべてを私が飲み込んでいるという充足感が勝った。

 んっ、じゅ、むぅ……ッ! 
 頭を上下させ、唾液を絡めて奉仕する。
 上目遣いで彼を見ると、いつもは冷静なお義兄様が快感に顔を歪め、シーツを握りしめていた。

「は、ぁ……いいぞ、結愛。可愛いのになんて淫らな口だ……」

 お義兄様が喜んでくれている。
 それだけで、私の脳内には幸せな麻薬物質が溢れ出した。

 私は夢中で舌を動かし続けた。
 彼氏を裏切っているわけではない、お義兄様を癒し更生させるための「治療」だから仕方ない。
 そう、自分に言い聞かせながら。

 これは序章に過ぎなかった。
 私が彼を癒やしているつもりでいた。
 でも、本当に深みへ引きずり込まれているのは、私のほうだったのだ。

 お義兄様の腰がビクリと跳ね、口の中に白濁した熱いものが放たれた。
 それをゴクリと飲み干し、口元を拭った私を、彼は狩人のような目で見下ろしていた。

「よくやった。献身的なナースだな」

 彼は汗ばんだ私の身体を引き寄せ、ベッドに押し倒した。
 その瞳はもう優しい義兄のものではなく、獲物を前にした雄の色をしていた。

「ご褒美だ。今度は俺が、お前を可愛がってやる」
「え……? 」
「随分と尽くしてくれたが、お前自身の身体も随分と溜まっているようだな。匂いでわかる」

 彼の手が、私の下着の縁に掛かる。
 ここからは私の番ではなく、彼による私の身体の徹底的な開発の時間だった。

「仰向けになれ。診察の時間だ」
 お義兄様は私をベッドに押し倒すと、私の下半身に残っていた最後の布切れ――白いビキニショーツを、指先で摘んで引き下ろした。

 抵抗なんてできない。
 奉仕の興奮と、彼に見られている羞恥で、私の股間は既に透明な蜜でぐしょぐしょに濡れていた。

「酷いな。触ってもいないのに、太ももまで垂れているぞ」
 彼は私の脚をM字に大きく開かせ様子を観察するだけでなく、私に詳細に伝えた。

「真っ赤に充血している。彼氏には清純な乙女の顔をしているくせに、俺の前ではこんなにだらしない雌の顔をするんだな」

 屈辱的な言葉なのに、子宮の奥がキュンと疼く。
 彼は私の反応を楽しむように、ゆっくりと顔を近づけてきた。

「ひゃっ……!」
 冷たい舌が太ももの内側を這い上がる。
 味見をするように、ねっとりと、長く。
 内ももの柔肌を舐め上げ、鼠径部のくぼみに舌先を潜り込ませる。

「ん、あ、くすぐった~い……っ」
「動くな。身体の隅々まで、俺の味を覚え込ませてやる」

 彼の舌は執拗だった。
 おへその窪みを抉るように舐め、脇腹の敏感な皮膚を甘噛みし、耳の裏側で熱い吐息を吹きかける。
 全身を舐め回されるたびに、私の肌に見えないお義兄様の所有印が押されていくようだった。

 彼の顔が再び私の股間に戻ってきた。

「さて。ここが一番、治療が必要そうだな」

 お義兄様の両手が、私の大陰唇を左右に大きく押し広げた。
 露わになった秘裂に、彼の熱い息がかかる。

「あ、見ないで、そんなに広げちゃ、イヤ……ッ!」
「嫌がっている割には、ヒクヒクと誘っているぞ。いただくよ、結愛」

 ジュルッ。  

 次の瞬間、強烈な吸引が私を襲った。
 彼が私のクリトリスを唇で捕らえ、掃除機のような吸引力で吸い上げたのだ。

「ひッ……!? お、お義兄さ、んッ!」
 ん……ちゅ、じゅる、レロ。

 そこからは終わりのない快楽地獄だった。
 お義兄様の舌使いは、彼氏の奏多のようなぎこちないものではない。
 医師として人体の構造を知り尽くした、的確で残酷なまでに執拗な舌技。
 尖った舌先でカリカリと刺激されたかと思えば、舌全体を平たくして面で押し潰し、また吸い上げる。

 クチュクチュ、ピチャ。

 静かな寝室に、彼が私を貪る卑猥な水音だけが響き渡る。
 長い。いつまで経っても終わらない。

 1分、5分、10分……。
 彼は息継ぎの暇さえ惜しむように、私の秘密の泉に顔を埋め続け、溢れ出る愛液を極上のスープのように啜り飲んでいる。

「あ、あ、頭、おかしくなるぅ……ッ! もう、許してぇ……ダメぇ……!」

 私はシーツを鷲掴みにし、腰をくねらせて懇願した。
 けれどお義兄様は許してくれない。
 絶頂の波が来る直前で舌を止め、焦らし、また舐め始める。

「まだだ。挿入れてないんだぞ? このくらいで満足するな」

 彼は顔を上げ、愛液と唾液でべとべとになった口元を拭いもせずに笑った。
 その顔は、淫らで、サディスティックで、どうしようもなく魅力的だった。

「ほら、もっと腰を振れ。もっと俺の舌に擦り付けてこい」
「ううぅ……お義兄さぁん……っ!」

 私は泣きながら、自ら股間を彼の顔に押し付けた。
 プライドも羞恥心も溶けてなくなった。
 この魔法のような舌に弄ばれたい、それだけだった。

 お義兄様の舌が、ついに膣口の中へと侵入してきた。
 指よりも柔らかくザラついた舌の感触が、未通の肉壁をこじ開け、蠢く。

 んむ、んッ、じゅぼ、ロロロ……ッ!!

 最後は、舌先による超高速の振動だった。
 陰核をピンポイントで弾かれ、私の視界が真っ白に弾けた。

「あっ、あ、あ、いくッ! イッちゃううううううーーーッ!!」

 ビクン! ビクン!

 身体が弓なりに跳ね上がり、私は声にならない叫びと共に、大量の潮を噴き出した。
 お義兄様は顔を背けることなく、その全てを口で受け止め、飲み干した。

 「ハァ、ハァ、ハァ……」

 嵐が去った後、私は抜け殻のようにベッドに沈んでいた。
 太ももは痙攣し、意識がまだ半分飛んでいる。

 お義兄様が私の口元に顔を寄せた。
 キスは許されない。
 でも彼は、私の愛液で濡れた自分の舌を、私の口の中へとねじ込んだのだ。

 ん……っぷ、ぁ……。
 自分自身の味がする。濃厚で、生々しい、雌の味。
 これはキスではない、味見だ。

「どうだ、結愛。これがお前の味だ」
 お義兄様は満足げに私の頭を撫でた。

「奏多とデートしている時も、思い出せよ。お前の身体の奥まで舐め尽くしたのは、彼氏じゃなく、この俺だということをな」

 私は涙目で頷くことしかできなかった。
 身体の芯まで刻まれた、快楽の記憶。

 私はもう、この人なしでは生きられない身体になってしまった。
 絶望的な幸福感の中で、ただそれだけを理解した。

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