目覚めたとき、わたくしは闇の底にいました。いえ、目覚めたといっていいのでしょうか?わたくしの感覚ではつい先程、いつものように夜の10時に寝間着に着替えて就寝したばかりです。
それなのに、わたくしが着ている服の肌触りは、部活の新体操のレオタード。解いたはずの黒髪も、高めのポニーテールに結わえられたままの感覚です。
しかも、わたくしの自由は、指先ひとつ残らず奪われています。 瞼(まぶた)は重く閉ざされ、身動きひとつ取れません。
「これは夢?金縛りというやつかしら?」
何とかならないものかと頭をひねります。でも、どうにもなりません。
――素晴らしい
すると耳元で、ねっとりとした吐息と共に、低い声が這い寄りました。 布擦れの音がして、わたくしの身体を何かが愛でるように撫で上げてきたのです。
「ひィっ!」
思わず妙な声をあげてしまいました。一条家の令嬢たるわたくしが何たる様でしょう、はしたない。その『何か』は意に介さず耳元で囁き続けます。
――新体操で鍛え上げられた、しなやかな四肢
――黄金比を奏でる、メリハリの利いたボディ
――高く結い上げられた、艶やかな黒髪
――晒されたうなじの白さ
――艶やかな唇の色
――まるで極上の芸術品だ
指先がわたくしの顎をすくい上げます。 見えない視線がレオタード越しに、わたくしの身体の起伏を舐め回しているのを感じます。
――お前は高嶺の花か。だが、今夜からは俺の雌花だ
「……っ、無礼な……わたくしを誰だと……」
――一条華凜。誇り高きお嬢様
名を呼ばれた瞬間、ゾクリと背筋が粟立(あわだ)ちました。
――その澄ました仮面を剥ぎ取り、俺の色に染め上げてやる
抗議しようとした唇が、ふいに塞がれました。
最初は、小鳥が啄(ついば)むような、焦らすような口づけ。 チュ、チュ、と唇の輪郭をなぞられ、微かな湿り気が残ります。 怒ろうとしても、気が抜けてしまうような甘い毒。 それは捕食者の罠でした。
「ん……むぅ……っ」
不意に、吸い付く力が強まります。 上下の唇を甘噛みされ、強く吸い上げられる。 唇の皮が薄くなったかのような、ピリピリとした感覚。 熱い。 息ができない。 わたくしの唇が、『何か』の手によって強制的に開花させられていく。
「……んっ!?」
無防備に開いた隙間を、『何か』は見逃しませんでした。 ぬるりと。 熱い舌の塊が、強引に侵入してきました。 歯列をこじ開けられ、わたくしの口内が蹂躙(じゅうりん)されます。 異物が口の中で暴れ回る。 舌先で敏感な歯茎をなぞられ、上顎(うわあご)をくすぐられる。
「ん、んんっ……ふぁ……」
嫌。 はしたない。 こんな濃厚な接吻、いけませんわ。
逃げようとするわたくしの舌を、『何か』の舌が執拗(しつよう)に追いかけ、絡め取ります。 根元から吸い上げられるような吸引力。 唾液が溢(あふ)れて止まりません。 飲み込むこともできず、口角からとろりと垂れ落ちていく。 顎(あご)を伝う雫(しずく)が、熱くて、恥ずかしい。
「じゅる……ちゅぷ……んっ」
水音が、頭蓋骨に直接響きます。『何か』の唾液と、わたくしの蜜が混ざり合う、卑猥な音。 濃厚な雄の味が、喉の奥まで満たしていく。 苦しいのに、頭がぼうっとして、心地よい痺(しび)れが広がっていく。
もっと。 もっと味わいたい。 理性とは裏腹に、わたくしの舌は『何か』を求めていました。 絡み合い、むさぼり合い、自ら『何か』の口内へ侵入しようとしてしまう。
「あぁ……んっ、もっと……」
自分でも信じられない、甘い懇願が漏れました。 キスだけで、新体操で培った体幹が嘘のように崩れ、メロメロに溶かされていく。
――素直ないい子だ。身体も正直だ
自慢の胸の膨らみを大きな手で包み込まれ、秘密の芽を指先で強く摘まれます。 甘い電流が全身を駆け抜けました。
そこは、駄目ですわ。 まだ誰にも触れさせたことのない、清らかな場所なのに。
熱い。 下腹部の奥底が疼(うず)いて、秘所から蜜がとめどなく溢れてくるのがわかります。 高貴な一条家の娘が、顔も見えない『何か』に発情しているなんて。
――欲しいと言え。処女(おとめ)を散らしてくれと、懇願しろ
逃げ場のない命令。 拒絶したいのに、なぜか身体が激しく反応し、わたくし自身を埋める熱いモノを強く求めてしまうのです。 この焼けつくような焦燥感を鎮めてくれるなら、誇りも羞恥心もいりませんわ。
「お願い……入れて……わたくしの……初めてを……奪って……ください……まし……っ」
お嬢様にあるまじき、卑しいおねだり。 その言葉を合図に、裂けるような痛みとともに、硬く太い何かがわたくしの芯を貫きました。
「あ……あぁっ!」
張り詰めていた薄皮が破られる音。 異物が、わたくしという器を押し広げ、最奥へと侵入してくる。 痛みは一瞬。 すぐに、脳髄が焼き切れるほどの圧倒的な充足感に変わります。
これが交わるということ? こんなにも深く、こんなにも隙間なく、埋め尽くされるものなのですか?
「凄いですわ……っ! 大きすぎます……っ!」
視界の閉ざされた世界で、内側の感覚だけが鮮明に焼き付く。 『何か』が動くたびに、内壁の襞(ひだ)一つひとつが擦られ、火花が散るようです。
わたくしはこんなにも淫(みだ)らでしたの? 知らなかった。 自分の中に、こんなにも貪欲(どんよく)な雌(メス)が眠っていたなんて。 高嶺の花と呼ばれたわたくしが、今はただの、肉欲に溺れる女に堕ちています。
「んっ!あっ!あっ!」
熱い楔に秘肉を貫かれ続けて、『何か』に下からギュっとしがみついたまま、ただひたすら苦しそうに喘ぐだけの『肉人形』と化していました。
でも、苦しくはないのです。感じていたのは、これまでにない昂ぶりと、妖しい快感。生きてきた17年間の人生で、一度たりとも味わったことのない、狂おしいほどの心地よさ。
これがオンナの悦びというものなのでしょうか?初めてでも、こんなに感じるものなのでしょうか?
わたくしの蜜壺から歓喜の涙がこんこんと溢れ続け、シーツをぐっしょりと濡らしているのがわかります。肌と肌が打ち付け合う淫音が耳に響きわたり、抱きしめている『何か』の獣じみた匂いに嗅覚を支配されます。閉ざされた瞼の裏側が朱く染まっていきます。こんなの、もう……。
「ゆるして、もう、むり……あたま、おかしく、なります……わっ!」
――ふむ、それなら一度絶頂させてやろう
――達する時は、イクと言え
掌から溢れるほどの双丘が搾り上げるように揉みしだかれ、脈打つ凶器が容赦なくわたくしの最奥を抉(えぐ)ってきました。
「きます、きてしまいます……っ」
「あ、だめ、イッてしまいます……っ!イクっ――!」
はしたない叫びと共に身体が大きく跳ね、私の意識が真っ白に弾け跳びました。男性なのか、そもそも人間なのかさえもわからない『何か』によって、わたくしは初めての絶頂に達してしまったのです。
「こわれるぅ、こわれてしまいますわぁ……」
一度の絶頂では許されませんでした。ぐったりした身体を四つん這いにさせられ、後ろから。自ら跨り迎え入れて腰を振るように強制され。立ち上がった『何か』に身体ごと抱きかかえられて体内の楔を軸に揺り動かされ。
体位を変えられ、何度も、何度も犯され、イカされ続けました。 時間は歪み、永遠のように感じられていました。
意識が飛びそうになるたびに、深い口づけで引き戻され、また快楽の渦へ叩き落とされる。 恥ずかしい、けれど、気持ちいい。 もっと、もっと汚して。
「中で……いって……! わたくしの中に、注いで……っ!」
理性が弾け飛んでいました。 妊娠への恐怖さえも、今は甘いスパイスに変わっています。 『何か』のすべてを、わたくしの最奥で受け止めたい。 種付けされたいという本能が、理性を凌駕していました。
――いいだろう、褒美だ
ドクドクと脈打つ『何か』の分身が、わたくしの子宮を直接ノックし、胎内が熱い奔流(ほんりゅう)で満たされました。 『何か』とわたくしが溶け合い、ひとつになります。 口づけで清められながら、わたくしは深い闇へと堕ちていきました。
――たっぷり注いでやったぞ
胎内を満たしていた熱の塊が、ずるりと引き抜かれました。 喪失感と少しの寂しさが胸をかすめます。 けれども、まだ終わりではありませんでした。
視界が閉ざされたまま、熱を持ったモノが、わたくしの頬に押し当てられました。 むせ返るような獣の匂い。先ほどまでわたくしの最奥を蹂躙(じゅうりん)していた、圧倒的な暴力の余韻。
――口を開けろ
「……え?」
――お前を幸せにした魔法の杖だ。感謝を込めて清めろ
信じられません。 あんな不潔なものを、口に? わたくしは一条家の……。
――嫌か? まだ足りないなら、もう一度奥まで犯してやってもいいが
「っ……し、しますわ……」
あんな激しい行為をこれ以上続けられたら、わたくしは壊れてしまいます。 震える唇を、恐る恐る開きました。 すぐに、熱く、硬い先端がねじ込まれます。
「んむ……っ」
口いっぱいに広がる、独特の苦味と、生々しい鉄の味。 そして何より、わたくし自身の蜜と『何か』が放った白濁が混ざり合った、冒涜(ぼうとく)的な味がしました。 汚い。 不潔。 吐き出してしまいたい。 でも、そう思ったのは、最初だけでした。
――舌を使え。裏筋をなぞれ。そうだ、飴をしゃぶるように
命令されるまま、舌を動かします。 チュプ、ジュル……。
下品な水音が、耳元で響きます。不思議なことに、「美味しい」と感じ始めている自分がいました。この熱い棒が、わたくしに快楽を与えてくれた。 わたくしをオンナにしてくれた「御主人様」。 その感謝を捧げなければ。
「ん、ちゅ……じゅるる……っ、ぷぁ」
最初は躊躇(ためら)っていた舌使いが、次第に熱を帯びていきます。 先端の窪みを舌先で突き、竿(さお)の部分を頬がこけるほど強く吸い上げます。 喉の奥へ、奥へと招き入れます。
もっと綺麗にして差し上げたい。 一滴残らず飲み干して差し上げたい。 無我夢中で頭を前後させ、唾液まみれにして奉仕していました。
――くくっ……いいザマだ
頭上から、嘲笑(あざわら)う声が降ってきました。
――男の肉棒に我を忘れて吸い付くか。高嶺の花のお嬢様が聞いて呆れるな」
「んっ、んぅ……っ!」
――嫌がりもせず、よだれを垂らして……お嬢様にはとんだ淫乱の素質があるようだな
淫乱……。 その言葉の響きに、身体の芯がビクリと跳ねました。 屈辱的ですわ。 そんな汚い言葉、わたくしには似合いません。
それでも罵(ののし)られるたびに、子宮の奥がキュンと疼(うず)き、口の中の動きが卑(いや)らしくなっていくのを止められないのです。
「ふ、ふぁ……ちゅぷ、じゅるっ……」
わたくしは、羞恥に身体を震わせながらも『何か』の剛直を離すことができず、ただひたすらにしゃぶり続けるばかりでした。
――これから毎日、夢の中で犯してやる
――今夜はここまでだ、また明日
*
はっとして、目を開けました。 見慣れた自室の天井。 カーテンの隙間から、白々しい朝の光が差し込んでいます。
時計を見上げます。 6時。いつもの起床時刻です。 昨夜ベッドに入ったのも、いつもの就寝時刻の10時。 まさか。 あんなに激しく、あんなに長く、ずっと犯され続けていましたの?
呆然とシーツに触れます。 冷たく、広範囲にわたってぐっしょりと濡れていました。 恐る恐る、太腿の内側を確かめます。 夢であってほしいという願いは、指先に触れた粘つく大量の感触に打ち砕かれました。
「嘘……ですわ」
鼻腔の奥にこびりついた、濃厚な獣の匂い。 身体の節々に残る倦怠(けんたい)感と、下腹部の鈍い痺れ。 そして何より、まだ閉じきらない秘所が訴える、確かな使用感。
あれは現実だった――ということなのでしょうか? 夢と現実の境界線が曖昧になり、 戦慄(せんりつ)とともに、身体の奥がまた熱く疼きだします。
これが、いつ終わるともわからない淫夢の始まりでした。なぜか体力だけは、熟睡したとき以上に回復しています。学校を休まずにすむことだけが、唯一の救いでした。