第22話:聖娼婦の告解

 マカオに来てから、早九ヶ月が経過しました。  
 私の中国語は、日常生活に支障がないレベルまで上達していました。  
 街の地理も覚え、ウェイロンのサポートなしでも一人で買い物に行けるほど、この街に馴染んでいました。

 そして今夜。  
 私はマカオの夜景を見下ろす超高級カジノホテルの最上階、ペントハウスにいました。  
 選ばれたVIP会員だけが入室を許される、裏社交界の闇パーティ。  
 広大なフロアには、煌びやかなシャンデリアの下、ベネチアンマスクで顔を隠した富豪たちがグラスを片手に談笑しています。

 私は舞台袖で、出番を待っていました。  
 身に纏っているのは、純白のウェディングドレス。  
 何層にも重なったチュールと、繊細なレースが美しい、本来なら愛する夫のために着るはずの聖なる衣装です。  
 指先には清楚なパールホワイトのネイルを施し、肘上まである光沢の美しいサテンのロンググローブをはめています。  
 唇には、花嫁らしい淡いローズピンクのルージュ。  
 どこからどう見ても、幸せの絶頂にある清らかな花嫁そのものです。
 ただ一点、白く細い首に、奴隷の証である黒い革の首輪が巻き付いていることを除けば。

「準備はいいか?」

 背後から声をかけてきたのは、タキシードを着崩したウェイロンです。  
 彼は今夜の私のパートナーであり、共演者。  
 私たちは事前に綿密な打ち合わせをしていました。
 今夜のショーのテーマは『結婚式直前の令嬢を、かつての男が襲い、牝豚に堕とす』という略奪劇です。

「ええ、完璧よ。思いっきりやってね、ウェイロン」
「任せろ。最高のショーにしてやる」

 彼はニカッと笑い、私の背中を叩きました。  
 かつて私を地獄へ誘った案内人ですが、今では鬼灯様をボスと仰ぐ頼もしい同僚です。
 彼の荒々しさはあくまで演出。
 私は彼を信頼していました。

 会場の照明が落ち、スポットライトがステージを照らします。  
 司会者の合図と共に、私はおっかなびっくりといった演技でステージ中央へと歩み出ました。  
 ベネチアンマスクの奥から、無数の視線が突き刺さります。

 そこへ、ウェイロンが乱入してきました。

「好久不見(久しぶりだな)……」

 彼はマイクを通し、わざとドスの効いた声で中国語を紡ぎました。

「あの頃はマグロだったが……随分といいツラになったじゃねえか」

 それは台本通りのセリフ。  
 私は怯える演技をしながら、内心ではゾクゾクと興奮していました。  
 純白のドレスを着た私が、野獣のような男に追い詰められる。
 その構図に、客席からゴクリと喉を鳴らす音が聞こえてきそうです。

「やめて……! 私はこれから結婚式なのよ……!」
「ハッ! お前にお似合いなのはバージンロードじゃねえ。……俺の肉棒だ!」

 ビリィッ!!

 ウェイロンが私のドレスの胸元を乱暴に引き裂きました。  
 悲鳴と共に露わになったのは、清楚な花嫁にはあるまじき、深紅のルビーが揺れる淫らな乳房。  
 客席から「おおっ……!」とどよめきが上がります。

 さらに彼は、私のスカートをたくし上げ、下半身を晒しました。  
 太腿の内側に刻まれた『椿と鬼』のタトゥーが露わになります。
 私はそれを見せつけるように、自ら脚を大きく広げました。

「見ろ! これが高貴な令嬢の正体だ!」

 ウェイロンは私をステージ上のソファに押し倒し、一気に貫きました。

「あぁっ……!!」

 演技ではありません。
 彼の巨根は相変わらず凶暴で、私の開発されきった最奥を容赦なく抉ります。  
 ステージ背後の巨大な液晶モニターに、私の顔がアップで映し出されました。  

 快楽に歪み、白目を剥きかけ、涎を垂らす「M(牝豚)-009」の顔。  
 さらに画面が切り替わり、結合部のアップになります。  
 純白のレースの隙間で、赤黒い肉棒が私の秘所をパンパンになるまで拡張し、出し入れされる光景。

(見られてる……! こんなに大勢の人に、中の中まで……!)

 巨大モニターに晒される羞恥心が、爆発的な快感へと変換されます。  
 私はカメラに向かって、だらしなく開いた性器を指で広げながら、わざと舌を出してアヘ顔を作ってみせました。

「もっと……! もっと激しくしてぇっ……!」

 私の嬌声を合図に、客席からベネチアンマスクの男たちがステージに上がってきました。  
 ここからは台本なしの乱交です。  

 口に、胸に、手に。無数の男根が私に群がります。  
 サテンのロンググローブをはめた私の手は、次々と違う男のモノを握らされ、その感触を確かめるようにしごきます。  
 胸元では、男たちが私の乳首ピアスを指で弾き、引っ張り、「こんな派手なピアスをして、随分と淫らな花嫁だな」と揶揄しながら揉みしだきました。
 私は純白のドレスを精液で汚されながら、もはや誰のモノか分からない肉棒を次々と3つの穴で受け入れ、飲み込みました。

「ごめんなさい……私は、純白のドレスが似合うような清純な乙女なんかじゃないの!  上品で貞淑な如月家の若妻・錦織深樹なんて嘘!  本当は……鬼灯様に見つけられ、最高のマゾ娼婦に躾けられた、ただの牝豚……名前のない『M』なの!  退屈で乾いた結婚生活なんかいらない!  私が欲しいのは、殿方からの欲望の証だけ!  この渇きを癒やしてくれる濃厚な餌だけなの!  熱い餌《ザーメン》をください……もっと、もっと、もっと!!!」

 モニターには、大量の精液にまみれて狂ったように笑い叫ぶ、黒い首輪の堕ちた花嫁の姿が大写しになっていました。

 ショーが終わり、会場は割れんばかりの拍手と歓声に包まれました。  
 私はフラフラになりながらも、プロの娼婦として優雅にお辞儀をし、舞台を降りました。

 その足で向かったのは、同じホテルの最上階にあるスイートルーム。  
 そこには、このショーの演出家であり、私の唯一の御主人様である鬼灯様が待っていました。

「戻りました」

 私は精液と愛液でドロドロになった破れたドレスを引きずり、彼の前に跪きました。  
 鬼灯様はグラスを傾けながら、冷ややかに私を見下ろしました。

「悪くないショーだった。ウェイロンも、いい仕事をする」
「はい。彼のおかげで、客席は最高に盛り上がりました」
「だが……」

 鬼灯様は立ち上がり、私の汚れたドレスを完全に剥ぎ取りました。  
 そして、まだ他の男たちの匂いが残る私を、強引にベッドへ押し倒しました。

「仕上げは俺だ。他の男の痕跡など、全て上書きしてやる」

 ズプゥッ……!!

「あ゛っ……!! 御主人様ぁ……ッ!!」

 貫かれた瞬間、魂が震えました。  
 先ほどまで何十人もの男たちに抱かれていたのに。ウェイロンの巨根で散々突かれたのに。  
 鬼灯様のモノは、それらとは決定的に「格」が違いました。  
 私の細胞の一つ一つが、「これこそが本物だ」と歓喜の声を上げています。

「どうだ? 誰が一番気持ちいい?」
「ああっ! 鬼灯様です……! 貴方様が一番です……!!」
「そうだ。お前は俺の所有物《おもちゃ》だ。骨の髄まで思い出させてやる」

 鬼灯様は私の髪を鷲掴みにし、獣のように激しく腰を打ち付けました。
 バチン、バチン!
 肉と肉がぶつかる音が部屋に響き渡ります。  
 私の意思など関係なく、無理やりこじ開けられ、最奥まで侵略される感覚。  
 それは暴力に近いセックスでしたが、私にとっては至上の愛撫でした。  

 激しいピストンと共に、私の脳内からウェイロンや客たちの記憶が消し飛びました。  
 あるのは、鬼灯様に抱かれているという至福だけ。  
 私はボロボロになるまで愛され、子宮いっぱいに熱い餌《ザーメン》を注ぎ込まれました。

「ステージ上、本名を叫んでいたが、いいのか?身バレするかもしれないぞ?」
「よいのです!私はここで、一生、貴方様のマゾ奴隷、名前のないただの牝豚として生きていきますからっ!!」

 鬼灯様の二度目の射精を受けて私も絶頂に向かいながら、そう決意を固めて口に出しました。

「そうだ、それがお前の本質だ」

 意識が遠のく中、鬼灯様からの神託が下ります。  

 確信しました。  

 私は深樹なんかじゃない、世界一幸せな、ただの牝豚なのだと。

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