Discipline3:『セックス合宿』での至福 第7話

 私は深い眠りの底から急速に浮上し目を覚ます。何時間寝たのかよくわからないが、とてもぐっすり眠れて快適な気分。暖かく、真っ暗で、怖いくらい静かな空間。

 上半身を起こすと、首輪に付けられた鎖がジャラリと音を立てる。私の動きに反応して部屋の薄明かりが灯る。温かみを感じる暖色系の間接照明。ぎりぎり本が読める程度の、ほんのりとした明るさ。でも、その灯りが照らす風景は、金属の檻と黒い床、無機質な拘束器具の数々。壁面の鏡に映る檻の中には、化粧が落ち乱れた髪の赤い首輪の裸の女の自分がいる。そんな調教部屋をぼんやりと眺めながら、昨晩のことをじっくりと思い返す。

 拘束台でのセックスの後、膣絶頂の至福の快感をもっと味わいたくて、そしてセックスの深い悦びを知る大人の女に私を変えて欲しくて、自分からおねだりしてしまった。そんな私を拓海さんは黒いゴムの床マットの上に優しく横たえ、時間をかけた丹念な愛撫で昂ぶらせると、びしょ濡れになった私の膣内を、逞しいペニスで体位を変えながら何度も何度も、たっぷりと時間をかけて突いてくれた。自分よりも私が気持ちよくなることを優先した丁寧なストロークは、私を再び官能の大海にいざない、幾度も押し寄せる快感のさざ波と激しい絶頂の大波が理性を失った私の心を快楽の天国に舞い上がらせ、前後不覚なほどの気持ち良さにいざなった。

 よく覚えていないが、正常な意識を失った状態で快感を感じるたびに、命令されたとおりに「セックス大好きっ」「拓海ご主人さま大好きっ」と繰り返しうわごとのように叫んでは、自分から激しく拓海さんの唇に吸いついていた気がする。セックスも拓海さんも、どちらもほんとうに好きになってしまいそう・・・少なくとも、騙されて処女を奪われたことはもう気にしていなかった。

 私が登りつめると拓海さんも私の中でイってくれた。イクときに中に出されるのはとっても素敵。熱い欲望のエキスを子宮で感じる快感、自分が征服されたという被虐の悦び、女としての魅力を発揮できた充実感。それらがオーガズムをより長く濃厚なものとし、多幸感を感じさせてくれるから。

 フィニッシュは後背位だった。正常位と後背位のほかに騎乗位と対面座位も経験したけど、後背位が一番好き。今のところ、後背位>対面座位≧正常位>騎乗位というところ。

 自分の顔にも身体、胸とかにも自信がない上に、エッチしているときの自分の顔を見られるのは凄く恥ずかしい。だから騎乗位で自分が気持ちいいように動いてみろと言われても、ぎこちなくなってしまう。腰を動かすのも慣れないと難しいし。むしろ俺を気持ちよくしろ!と命じられたほうが割り切って腰をふれそう。

 正常位は、エッチのときの王道だし、キスもしやすいし、拓海さんも腰を振りやすそうで気持ちよくなれる。だから嫌いではないけれど、やっぱりちょっと恥ずかしい。

 対面座位は拓海さんに密着できるのがとてもよい。キスもしやすいし、顔が近すぎて逆に見られにくいのも。でもガンガン突かれる姿勢じゃないからフィニッシュを迎える体位ではないと思う。だから2番目。

 後背位は、淫らで酷い表情をしている自分の顔を隠せる。拓海さんも一番自由に腰を使えるみたいで色々変化をつけてくれる。それに四つん這いになってお尻を上げて、女のシンボルであるヴァギナを捧げて犯されていると、顔とか体つきとかに自信がないことを忘れられて、自分がヴァギナだけの存在、拓海さんの言う「発情マンコちゃん」に思えて、快感を貪ることに没頭できるから好き。


 自分の顔を鏡で見たり、拓海さんと目を合わせるよう命じられたりもするけど、短時間のことだし、その羞恥心が絶妙なスパイスとなったりするのもよい。なにより男性に屈服して支配されてるって思えてゾクゾクしてしまう。こんなわたしはやっぱりマゾなんだろうと思う。

 だから拘束されて犯されるのも好き。自分が拓海さんの性欲を満たす道具として抵抗もできずに好きなように使われるというマゾヒスティックな気持ちで、何もせずに与えられる快感をただひたすら感じていればいいのだから。
 つまり拘束されてバックから犯されるときが最高に気持ちいい。

 それにしても、挿入されても、もう全然痛くないのはなぜだろう。拓海さんのは見た感じ小さくはない、というか大きいほうなんじゃないかと思うのに。たっぷり濡らしてくれるから?身体の相性がいいから?慣れてきたから?それともわたしのアソコ、実はゆるいとか??心配だから、今度調べてみようかしら。

 拓海さんは大丈夫と言っているけれど、妊娠してしまわないかとても心配。でも生挿入と膣内射精の快感にはまってしまった私は、もうゴムありのセックスでは満足できそうもない・・・なんて、ゴム経験なんて孝さんとの最初のセックスの時だけだった。

 正直に言えば、イってるときは女の本能全開で、このまま中に出して、私を妊娠させちゃうくらいたくさん出して欲しい、なんて思ってしまっている。だから膣内射精を拒むなんて無理。とにかく拓海さんの言うことを信じるしかない。

 拓海さん、そういえば俺が許可しない限りもう拓海さんとは呼ぶな、ご主人様か拓海ご主人様のどちらかで呼べ、と言われて何回も直された。今度言ったら懲罰としてナターシャに一本鞭で打たせると。それはもう絶対にイヤ。

 拓海さん・・・拓海ご主人様はもう起きたかな?ここに一人でいるのはまだ怖いから、早く来てほしい・・・。いま何時なんだろう?お腹空いた・・・。

 昨夜はセックスの後、二人で横になってウトウトしているところへナターシャさんがやってきて拓海ご主人様を連れて行ってしまった。去る前にHouse!と命じられ檻へ戻って寝てしまったから、何も食べていないし、身体を洗ってもいない。

 檻から四つん這いで這い出ると、そのままの姿勢で移動し、ペット用トイレで小用を足し、ペット用のウォーターサーバーからチロチロと舌を出して水を飲む。室内にだれもいないと、そんな屈辱的なことも意外と抵抗なくできるものね。

 やることがなくなり、檻に戻ってゴロンと横になる。どこで横になっても大した違いはないけれど、檻の中には枕と布団代わりのタオルケットがあるし、部屋の隅だから少しだけ居心地がいい。

 しばらくすると灯りが消えて真っ暗に。暗闇の中にいると、ひとりの寂しさ以上に誰も来ないのではという恐怖が増してくる。耐えられなくなって部屋の真ん中にのそのそと這っていき、鎖の繋ぎ先である杭のマイクに向かって声を出す。

「あの・・・拓海・・・ご主人さま・・・おはようございます・・・」
 自分でも驚くくらい心細げで不安そうな声だ。少し待っても返事がないので、今度は元気よく。
「拓海ご主人さま!おはようございますっ!」

 すると、寝室に通じるドアが静かに開いて拓海さんが入ってきた。ドアの向こうも薄暗く、何時ごろなのか検討がつかない。彼はイケてないスウェット姿で髪はぼさぼさ、眠そうな目をこすっている。どうやら彼も寝ていた様子。

「おはよう、メグ。昨日あんなに激しくしたのに今日も元気だね・・・ふぁあああ」
 セリフの途中からあくびまでしている。私を監禁して調教しようとしている悪い男のイメージとは程遠いその姿を見せられて、こっちもなんだか脱力してしまう。

「そういう拓海さ・・・ご主人さまはどうなんですか?眠そうに見えますけど」
「ああ、熟睡していたところをメグのモーニングコールで起こされたからな。でもたっぷり寝たから熱いシャワーを浴びてご飯を食べれば元気になるよ。今日もしっかり調教してくれるのか心配なのかな?大丈夫、時間はたっぷりあるし」
「違いますっ!それよりわたしもお腹が空きましたし、お風呂にも入りたいです」
「すまないがいったんこの部屋に入ったら、お風呂は最終日までおあずけだよ、俺の匂いを覚えて欲しいから。気になるところは俺が拭いてやるし、食事はもちろん用意する。ちょっと待っていなさい」

 申し訳なさそうな顔をしてそう言うと、彼はドアの向こうに消えた。私は檻の中に横たわったまま、今日は何をされるのだろうと思いながら、ただひたすら彼が戻ってくるのを待つ。

 カチャリという音が聞こえて、ウトウトしていた私はハッと目を覚ます。ドアのほうを見ると、Tシャツに短パン姿の拓海さんがドアを閉めて近づいてくる。シャワーを浴びたようでさっぱりしていた。

「待たせたね、メグ。こっちへおいで、COME!」
 檻を出て四つん這いで近づいていくと、なぜか頭を撫でられる。
「また眠っているのかと思ったら、俺が部屋に入ったとたんに起き上がってすごく嬉しそうな表情をしたから。寂しかったんだね、よしよし」
「そんなこと・・・」
 図星を指され、動揺して口篭もると心情を吐露するよううながされる。
「メグ、ここはお前のための場所なのだから、自分の気持ちを素直に表していいんだ。それにお前は俺の奴隷なのだから、ご主人様には全てをさらけ出す義務がある。さあ、俺が来る前と後でどんな気持ちだったのかな、俺の可愛いマゾ牝奴隷の吉野芽美?」

 言い終わると、拓海さんは返事を待たずに私の体を横たえ、唾液や汗、エッチの跡などを熱い濡れタオルで拭きはじめる。しばらく黙って身を任せて様子を伺う。彼は私の身体を高級な陶器やガラス細工であるかのように慎重に扱かって、痛くないように優しく拭いてくれる。なんだか楽しそう。そんな拓海さんを見ていたら、こんなセリフが素直に口からこぼれ出す。

「ここに一人でいると、寂しくて怖くなるの。だから拓海ご主人様が来てくれて嬉しかったわ」
「そうか、寂しくて怖かったんだね。そうだな・・・では、ここでの暮らしに慣れるまでは、できるだけ一緒にいてあげるし、呼べばすぐ来てあげることにしよう。だから、そういう気分になったら遠慮なく俺を呼びなさい。これでどう?」
「うん、そうしてくれるならきっと大丈夫」
 拓海さんの気遣いにきゅんとしてしまう。それから黙ったまま、拓海さんが身体を清めてくれるのに任せる。心地良く時が過ぎていく。

「よし、これでどう?」
「うん、さっきよりはずっといいわ。ありがとう。あの・・・顔は?お化粧とか・・・」
「化粧直しはナターシャに任せるから。でも、その前に食事にしよう」
「よかった。そうね、お腹すいたわ」

 ナターシャから受け取った皿に盛られた炒飯をスプーンで食べさせられる。細かく刻んだ肉と野菜が多めに入っていて、バランスよく栄養がとれるようになっているみたい。朝から炒飯なんて重くて食べられないとか、またあのお寿司が食べたい、とかぶつぶつ文句を言いながらも完食してしまった。女の子にしては食べすぎだったかもしれない。お腹が空いていたし、美味しかったから仕方ないの。

 食事が終わるとナターシャさんがやってきて、拓海さんが見ている中でしっかりとメイクをしてくれた。エッチの時に恥ずかしい姿を見せまくっているとは言え、行為の跡の残る身体や化粧の落ちた顔を拓海さんに見られるのはとても恥ずかしかった。

 メイクが終わり、ほっとしてようやく拓海さんと目を合わせる。
「綺麗でとても色っぽいよ、メグ。お前をまた犯したくなった」
 そんなことをナターシャさんがいる前で言われても困る。ほら私を見る目つきが鋭くなっちゃったじゃない。でも彼女に見せ付けてやるのもいいかも。

「しかしまぁ食事したばかりだしな。お腹が落ち着いた頃にまた来る」
 と思ったら肩透かしをくらってしまった。二人とも部屋を出て行って一人取り残される私。でも、もう寂しくはない。呼べばいつでも拓海さんが来てくれるって言ってくれたから。

 暖かく薄明かりが灯る静かな部屋で、ひとり物思いにふける。家族や仕事、友人達のことはここでは他人事のように思える。頭に浮かぶのは拓海さんのこと、拓海さんと交わした契約のこと、拓海さんとのセックスのこと。

 不安が払拭され睡眠欲と食欲が満たされた状態でそんなことを思い出していれば、私の心が性欲で占められていくのは自然な流れだろう。壁に目をやれば、鎖付きの赤い首輪を嵌め、そのインパクトに負けない強めのアイメイクと真紅のルージュのマゾ牝奴隷のわたしが檻の中で座り込み、柵に背中を寄りかからせているのが見える。

 そのまま片方の手が胸に、もう一方が股間に伸びていき、しばらくすると、静かな室内でハァハァという喘ぎ声とピチャピチャという水音が奏でられはじめる。

― ここはお前のための場所なのだから、自分の気持ちを素直に表していいんだ―
 拓海さんの先ほどの言葉を免罪符に、昨日のセックスを思い出しながら、拓海さんが戻ってくるまでの間、私はずっと淫らな一人遊びにふけり続ける。「セックス大好き」「拓海ご主人さま大好き」と呟きながら。

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