そして6月26日日曜日の今日、拓海は7回目の週末調教を土曜日の夜で切り上げて、約束どおり芽美をデートに連れ出していた。場所は鎌倉。梅雨時ではあるが、朝から晴れ間が広がり、予報では日中の気温は30度近くまで上がるとのこと。湿度は低く、南東から爽やかな風が吹く快適なデート日和だ。
「梅雨時なのにこんな良いお天気なのは、私の日ごろの行いが良いからですよね、拓海さん♪」
時刻は午前9時過ぎ。朝からハイテンションの芽美は、拓海と腕を組んで名月院の石段をゆっくりと上がっている。名月院の通称は「あじさい寺」。石段の両側にはピークを迎えた紫陽花の花が咲き誇っている。どれも“名月院ブルー”と呼ばれる濃い青色で、強い日差しとは対照的な清涼感を醸している。拓海達以外にも紫陽花を愛でる人々で賑わい始めていた。
拓海は道路混雑を見越して朝早く芽美を迎えに行き、長谷駅の近くに駐車して電車で移動してきたところだ。名月院からは徒歩と江ノ電で鶴岡八幡宮~鎌倉大仏というルートを回る予定だ。
「そうだな、講習でもとても熱心で覚えも良かったと支配人から聞いている。オメガにスカウトしてもいいかと言われたぞ?」
「え、あの人そんな冗談言うんですか?」
「いや、あいつは仕事関係で冗談を言うやつじゃない。お前に一流の嬢になれる素質を感じたんじゃないかな」
「そうなんだ。でも一流のソープ嬢になれるなんて言われても嬉しくないですよ!」
「それはそうだろうな。しかしどの世界でもそうだが、一流になれるのはごく一部だぞ。多くの女達をシビアな目で評価してきたアイツに女として、人間としての魅力が認められたんだから誇っていい。それに、もしそうなったら、月に何百万、年に何千万の収入だ。トライしてみる価値は十分にあるんじゃないか?」
「ええっ、そんなにたくさんお金もらえるのっ?」
「ああ、ちょっと計算してみればわかるだろう?例えばナターシャの1回150分の料金を30万円、うち入浴料が10万円とおき、シフトは1日3人、週4日勤務と仮定する。すると彼女の日収は20×3の60万円、週収は60×4の240万円、月収は240×4の960万円、年収は960×12で1億1520万円、ということになる。しかも金の支払いは密室の中で現金手渡しだから税務署も実態を把握しにくい。チップやプレゼントをもらっていたりしてもわかりにくいってことだ」
「ふぇぇ~、ナターシャさんって実は凄いお金持ちなんですね!」
「実際にはここまでいかないよ。1日3人お客さんが来ない日もあるし、生理や体調不良で働けない日もある。日本の所得税は累進課税で高いから、ざっと半分は税金でもっていかれる。入浴料を10万円とおいたが、あの店の施設維持には金がかかるからもっと高いかもしれないし。それでもナターシャが借金を返してある程度贅沢な暮らしをしても数年は遊んで暮らせる貯金ができる程度の稼ぎになっているようだぞ」
「その入浴料ってなんですか?」
「銭湯や温泉に行けば入るときにお金を払うだろう?あれと一緒だよ。ソープといっても名目は公衆浴場で、その中でたまたま出会った男女が一瞬で恋に落ちて性行為に及んだとしても、それは自由恋愛。二人の間で金銭授受があったかどうかはわかりません。という建前で経営されているのさ」
「あ~、そういうことなんだ・・・」
「AVも、モザイクを入れてるのは性器を見せるのは法的に禁止だってことのほかに、違法だから本番はしていない、挿入しているふりをしているだけだが。それがわかると白けるから見えないようにしている、という建前もあるらしいぞ?」
「へ~、建前社会の日本らしいですね」
「それでどうだ?高収入と聞いて働いてみる気になったか?」
芽美が驚いて拓海をみると、ニヤニヤしている。冗談のようだが、驚かされた仕返しをすることにしてこんな返事を返す。
「そうですね♪ちゃんとお話を聞いてみたい、って支配人さんに伝えてもらえますか?」
予想外の返答がきて動揺する拓海。歯切れの悪い口調でこんなことを言う。
「えっ!?本気かっ??・・・あ、いや、そういうことなら、時間ができたときにでも・・・忙しくてなかなか連絡する時間がとれないとは思うが・・・」
拓海がわかりやすくうろたえる姿をみて芽美は満足し、また連絡を渋る言葉に自分を働かせたくないという気持ちを感じて安心する。
「ふふ、冗談ですよ、じょ・う・だ・ん!」
笑いながらそう大声で言った後、拓海の耳に顔を寄せて小声で。
「8月になったら、ご主人様専属のソープ嬢になってあげますから・・・6日の確認テストにも期待していてくださいね♡」
芽美の表情には、今日のデート用の若々しく可愛いファッションとアンバランスな大人の色気が滲んでいる。
拓海の調教を受けるようになって以降、男性と接するときに自分でも気づかぬままコケティッシュな仕草をするようになっていた。孝が往生際が悪く執着しているのも、合コン相手の男子2人から誘いがきたのも、芽美のそういった態度に、誘えば乗ってくるかも、という“隙”を感じさせられているからだった。ちなみに、優斗はそういう仕草には無反応。良くも悪くも鈍感なのだ。童貞のせいか、巨乳の胸の谷間などのダイレクトな刺激に弱いようだ。
温泉旅行デートに続く2回目の本格的なデートということで、今日の芽美のファッションにも気合が入っている。
白の基調色に淡いピンク色の花模様の入ったノースリーブチュニックのトップスに、スポーティなデニムのショートパンツのボトムス。太腿の付け根まで露出する大胆なカットだが、強い日差しの下では健康的な若々しさを演出できると強気で選んだ。夜、涼しくなったときのために、レモンイエローのカーディガンが車に積んである。
今回はニーハイを履かずに生脚で勝負。背の低い自分の脚が少しでも長くみえるよう、むっちりとした太腿からすらりと伸びる下腿まで脚全体を見せつける。チュニックの丈はショートパンツがギリギリ見えるかどうかの長さでミニスカのような演出をしてセクシーさもたっぷりだ。
足元には、身長差をカバーするために厚底のウェッジソールサンダルを選んだ。おしゃれな編み上げストラップのついた上部は黒色で、厚底の色はやわらかなクリーム色。その色合いは足元を安定して見せている。
色彩不足を補うために、右肩から斜めに明るいオレンジ色のポシェットを下げている。首には小さなMマークのついた黒の細いチョーカーを嵌め、左手の薬指には例の指輪をしている。二人で外出するときには、マゾ牝奴隷の証として必ず着用するように命じられている。
メイクはセクシーさよりも若々しさ・可愛らしさを重視し、口紅の色はピンク。指先には薄ピンクのマニキュアを塗り、オープントゥからも薄ピンクのペディキュアが可愛らしくのぞいている。
香水はジバンシーのプチサンボン。メイクとファッションの方向性に沿う爽やかで清潔感のある香りだ。
髪型は、トップを編みこみサイドでゆるやかにまとめ淡い黄色の花模様の髪飾りで飾られている。耳たぶにはシンプルな白のピアスが光る。
チュニックの胸部の二つの盛り上がりは、いつもよりやや大きく見える。何か秘密がありそうだ。
朝迎えにきた拓海に芽美は照れ隠しにこんな言い方をした。内心はもちろん褒めてもらいたかった。
「ちょっと若作りしすぎたかなぁ?」
拓海は、そわそわする芽美をしげしげと眺め、ニッコリ笑って言った。
「天使が光臨したのかと思って驚きのあまり声が出なかった。とっても可愛いよ、メグ♪」
大仰過ぎる賛辞に芽美は吹き出した。
「そんな風に言ったらお世辞だってまるわかりですよ~、もう・・・」
そう言いながらも芽美は嬉しそうだった。
拓海は温泉旅行のときと同様、そんな芽美を被写体にして行く先々で写真を撮った。名月院の紫陽花の咲き乱れる庭や鶴岡八幡宮の境内で。長谷寺の赤い大きな提灯や鎌倉大仏を背景に・・・。芽美は嬉しげに笑顔でポーズをとって応じた。多くの観光客が賑わう名所での撮影は、もちろん全て健全なものだった。
鎌倉大仏の前では、西洋人観光客の若者から、日本旅行の記念に一緒に写真を撮らせて欲しいと片言の日本語でお願いされた。さらにメールフレンドになろうと言われて片言の英語と日本語とで話をしたら、なんと17歳のイタリア人学生だった。
どうやら芽美のことを同年代の学生だと勘違いしていて、拓海のことは父親か親戚の叔父かなにかだと思っているようだった。その眼前でよくナンパしてくると驚いたが、イタリア人と知って納得した。
拓海の許可を得て連絡先を交換した。イタリア人も日本でメジャーなSNSアプリをやるんだと驚いたら、日本好きな若者達の間で流行しているとのこと。拓海の許可を得る様子を見て父親だと確信したようで、別れ際に「サヨナラ、メグとパパサン」と挨拶してきて芽美は笑いをこらえるのに苦労した。
「お前が17歳だとすると、俺はお前を20歳そこそこで作ったことになるんだが」
「日本人は若く見えるから、もっと年上だと思ったんですよ、きっと」
「ということは俺は外国人からは年相応に見えるんだな。日本人からはこれでも若く見られるのに」
苦笑する拓海を見て、芽美は楽しそうに笑った。
二人は長谷駅の近くに駐車しておいた拓海のSUVに乗って渋滞する134号線を通って葉山に向かう。
海沿いのカフェで食事をして16号へ抜け金沢八景を通過して八景島へ行き、テーマパークでイルカショーと水族館を楽しむ。
首都高を使って横浜みなとみらいへ移動し、ホテルでディナーを食べながらポールダンスショーを見学する。
「セクシーなのは想像通り。でも、こんなにアクロバティックだとは思わなかった!」
というのが芽美の感想だった。
ショーが終わると首都高湾岸線経由で帰宅。助手席から川沿いの未来的な夜の景色を眺めながら、今日はエッチしないのかな、と芽美は思う。芽美の住むマンションに到着したときには日付がとっくに変わっていた。
「さ、着いたよ芽美」
「うん、拓海ご主人様、今日はどうもありがとうございました!盛りだくさんな内容ですっごく楽しかった♪」
「それは良かった。でも疲れたろう?明日仕事なのに遅くまで連れ回してしまって申し訳ない」
「ううん、全然そんなことない!ご主人様こそずっと運転し続けて疲れたでしょう?」
「それならいいが。俺は大丈夫さ。運転には慣れているし、お前が免許を取得すれば、疲れたら代わってもらえるようになるしな」
「そうね、がんばる!」
そこで芽美はひと息つくと、身体をモジモジとさせ上目遣いでこう言った。
「少しお茶でも飲んでいきませんか・・・?」
昔から変わらぬ女性からの遠まわしなエッチのお誘いだ。しかし拓海はあっさりとそれを断る。
「いや、労わりの気持ちだけうけとっておく。明日は朝から忙しいんでな」
消沈した芽美に顔を寄せ、ちゅっと頬に軽いキスをして続ける。
「今度の水曜日は久しぶりにお前の部屋でのんびり過ごすつもりだ。だから、そのときに、な?」
「そうね!講習終わったんだった!うん、楽しみにしていてね、ご主人様♡」
元気を取りもどした芽美は自分からも拓海にキスをするとドアを開けて車から降り、マンションの中に入っていく。部屋に入って拓海に無事部屋に入ったこと、室内にも異常がないことを電話で報告。
窓から拓海の車が去っていくのを見送ると姿見の前に立ち、こうつぶやきながらチュニックとショートパンツを脱いだ。
「見えないところも頑張ったのになぁ・・・『エッチな服装だ』って褒めてもらえると思ったのに残念・・・」
姿見の中には、黒レザーのビスチェを身につけたボンデージ姿の女が映っていた。下は超ハイレグタイプの黒レザーのチャック付きパンツ。
ビスチェのバスト部分には芽美のバストサイズよりやや小さい穴が開いている。穴の周囲はストレッチ素材で、付け根全体を絞られたバストが小型の砲弾のように突き出ている。
腹部はフロントがベルト状のデザイン、バックが編み上げ式のシースルー。ウエストがキュッと絞られ、相対的にバストを大きく、芽美の大きく美しいヒップをさらに悩ましく見せている。
それだけでも十分いやらしいが、乳首に貼られた赤い小さなハート型のニップルシールが淫靡さを倍増させていた。芽美は溜息をついてそれを剥がすと、就寝準備をして悶々としながら眠りについた。
『拓海ご主人様が悦ぶから』『拓海ご主人様を悦ばせるため』という言い訳を自分にしながら、とうとう自ら主体的に淫乱女の格好をするようになった芽美。それが自分の心の奥から湧き出る性的願望であることから目を背けて・・・。