第18話:椿と鬼の烙印(後編)

 タトゥーの痛みがまだジンジンと残る太腿を引きずりながら、私はとあるビルの地下にあるスタジオへと連れてこられました。  
 無機質な白い空間。  
 そこに設置された照明機材と、黒光りする業務用のビデオカメラが、冷徹なレンズを私に向けています。

「さて、これが仕上げだ」

 鬼灯様がディレクターズチェアに座り、足を組みました。

「明日からお前は市場に出る。客にお前の『性能』を正しく伝えるための、取り扱い説明書が必要だろう?」
「はい、御主人様」

 私は頷き、カメラの前の指定された位置に立ちました。  
 今の私は、一糸まとわぬ全裸です。  
 身につけているのは、先ほど買い与えられたルブタンのピンヒールと、所有者の証であるアクセサリーだけ。  
 首には黒革の首輪。  
 乳首には深紅のルビーが揺れるピアス。  
 左手の薬指には、重たい鉄の指輪。  
 そして太腿の内側には、赤く腫れたばかりの『椿と鬼』の刻印。

「ポーズを取れ。自分の一番淫らな穴が見えるようにな」

 命令に従い、私はカメラに向かって深く腰を落としました。  
 M字に開脚し、上半身を捻ってレンズを見つめる屈辱的なポーズ。  
 見せつけた太腿の椿が、照明を浴びて艶めかしく主張しています。

「回すぞ。自分のスペックを自分の口で客に説明しろ」

 録画ランプが赤く点灯しました。  
 私はカメラのレンズを、まだ見ぬ数多の「ブリーダー(飼い主)」様たちだと思い込み、媚びるような上目遣いで唇を開きました。
 黒革の首輪にそっと手を触れ、さりげなく存在を強調します。

「……はじめまして、動物愛好家の皆様。……製品名は、M-009(エム・ゼロゼロナイン)と申します」

 自分の名前を捨て、無機質なコードネームを名乗る。  
 その瞬間に、人間としての私が死に、商品としての私が産声を上げました。

「……製造年数は27年ですが、中身は開発されたばかりの『新製品』です」

 震える指で、自慢の胸を深紅のルビー付ピアスをアピールするように揉みしだきながら続けます。

「……チャームポイントは、母乳が出そうなほど柔らかな乳房と……どんな巨根でも根元まで飲み込む、開発済みの安産型骨盤です」

 そして、私は鉄の指輪を嵌めた指で秘所を押し広げ、カメラに向けて中を見せつけました。

「……特技は……殿方の命令なら、どんな恥ずかしいことでも悦んでしまうこと……そして」

 ゴクリ、と唾を飲み込み、欲望に濡れた瞳でレンズを射抜きます。

「……注がれた熱い餌《ザーメン》を、一滴残らず搾り取ることです。……私のお腹はいつも空いています。どうか、熱い餌《ザーメン》をたっぷりと注いでください……」

「カット……悪くない」

 鬼灯様が立ち上がり、カメラの前へ歩いてきました。

「だが、口だけなら誰でも言える。実演が必要だな」

 鬼灯様は無造作に私の口へ指をねじ込み、かき回しました。  
 そして唾液で濡れた指を、そのまま私のあられもない秘所へと突き立てたのです。

「ひぁっ……!?」
「見ろ、この食いつきを。指一本でこの有様だ」

 カメラのズームが寄ります。  
 私の意思とは無関係に、膣口がヒクヒクと収縮し、鬼灯様の指を貪るように吸い付いている様が、高画質で記録されていきました。

【Product Specification:M-009】

▼基本スペック
商品コード: M-009
ランク: Ultimate Premium(究極品)
製造国: 日本
ボディ: 157cm / B93(G) / W58 / H90
特徴: 天然極上乳、安産型骨盤、感度極良好

▼性能評価(Performance)
感度(Sensitivity): SSS(射精感知機能搭載)
奉仕(Service): 特S(絶対服従)
締まり(Grip): SS(自律駆動可)
主食(Main Diet): 精液

▼対応プレイ 奉仕、SM、多人数、長時間耐久、異物挿入

▼ブリーダー(調教師)コメント
「元は不感症のマグロだったが、徹底的な品種改良により、精液を主食とする極上の牝豚に仕上がった。  見てくれは清楚な貴婦人だが、中身は底なしの淫乱だ。 完璧に躾けられている。心ゆくまで使い潰してほしい」

 モニターに映し出された自分の「仕様書」を見て、私はうっとりと溜息を漏らしました。  

 M-009。
 それが私の新しい名前。  

 私はもう、生きる価値のないつまらない女ではありません。  
 見知らぬ大勢の男たちに性的消費される、高性能な「|性処理専用生体《ラブドール》」として世にその名を知らしめることになったのです。

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