Discipline7 Peripeteia  第2話

「芽美、ちょっとフライングだけど26歳の誕生日おめでとう!」
 そう言いながら拓海は、テーブルの反対側の椅子に座っている芽美に26本の赤いバラとかすみ草の花束を差し出す。

「ありがとうございますご主人様!バラの花束もらったのなんて初めて!嬉しい♪」
 芽美も手を伸ばして花束を受け取ると、しげしげと眺め、匂いをかいでうっとりとする。

 11月2日水曜日の午後8時。明日の芽美の誕生日を前にして二人は拓海が予約しておいた西麻布の隠れ家的な一軒家フレンチレストランに会食に訪れている。ドレスコードのマナーを守って拓海はダーク系の襟つきシャツにジャケット、芽美はボルドー色のミニワンピースにクリーム色のカーディガン。首には銀のM字の飾りのついた黒く細いチョーカー。

「それから、これが誕生日プレゼント。お前は不要と言っていたが、やはりそういうわけにもいかないからな、気に入ってくれるといいが・・・」
「ええっ、これもいただけるんですか?!」

 ご主人様から誕生日の希望を尋ねられたとき、芽美は行ったことのないような素敵なレストランでの食事だけを希望した。9月に海外旅行に連れていってもらったばかりだし、他にも何かとお金をかけてもらっているからプレゼントはいらないからと。だから、バラの花束だけでも嬉しいのに、さらに別のプレゼントまであることに驚いてしまう。
 恐縮しながらリボンのかかった小さな白い箱を受け取り、うながされて箱を開けると、中には高価そうなフープピアスが入っていた。
 直径18ミリ幅4ミリと小さめで、円形のデザインに緩やかなウェーブがかかった立体的な形状の美しいデザイン。地金にK14ホワイトゴールドが用いられ、ウェーブ部分には芽美の新たな誕生石となった直径1.5ミリのダイヤモンドが潤沢に並べられ上品に輝いている。
 身につけた女にスマートな美しさと高貴な印象を与えるピアスだ。

「わぁ~、とっても素敵!それに高そう・・・こんな高級品、わたしには似合いませんし、もし無くしてしまったらと思うと怖くてつけられませんよご主人さま・・・」
 嬉しいけど困る、そんな複雑な表情を浮かべて困惑する芽美の反応を楽しんだ後、拓海はこう言って悩みを解消する。

「そうだな。確かに去年までのお前には不相応だったかもしれないな。でもテアー(女神)の称号を獲得した今のお前なら十二分に釣り合いがとれて、素晴らしく似合うと思うぞ!それに値段も安いとは言わないが、おそらくお前が想像しているよりも安いと思うから心配するな!」
「そうですね・・・わかりました!金曜日にピアス穴を開けに行ってきて7日のご主人様のお誕生日にはこれをつけてお祝いしてさしあげますね♪」
「ああ、そうしてくれると嬉しいな。わざわざ開けに行かずとも、この前みたいに俺がここに穴を開けてやってもいいんだぞ?」

 イヤらしく笑って芽美のボルドー色のミニワンピースの胸を指でつんつんする拓海。個室だからそうした行為も大丈夫だ。
「イヤですわご主人様・・・それも悪くないけど最初は耳につけてみたいです♡」
 顔を赤らめ、座り直すふりをして腰をかるく振る芽美。リン、リンと微かに鈴の音が聴こえた。

「そうだな・・・ところで週末のハロウィンはどうだった?こっちはお前にも手伝ってもらって計画書を修正したりして頑張ったのに、結局大雨で土曜日のイベントが中止になったり、日曜日も人が集まらなくて萎えること甚だしかったのだが・・・」

 拓海は自分が企画運営に関わった10月29、30の土日に予定されていた栃木県某箇所でのハロウィンイベントのため前日の金曜日から現地入りし、イベント期間中の土日はもちろん翌日に後処理を終えるまで現地に滞在していて、帰宅したのは月曜日の深夜だった。

 週末は芽美のほうも予定通りに美咲たちとセーラー○ーンのコスプレで渋谷を徘徊して雰囲気を楽しもうとしたが、雨だったから夜に直接クラブのハロウィンイベントに参加していた。

 お互いに別々に過ごした週末の出来事を話したいと思いつつ、拓海はイベント関係の事務処理と月末月初に発生する事務的な処理で忙しく、芽美は出張時の衣服の洗濯や事務仕事のサポートで忙しかったから、今の今までゆっくり話をする時間がなかったのだ。

 二人は瀟洒なミシュラン二つ星レストランのフランス料理とワインに舌鼓を打ちながら、拓海の週末イベントの話から、拓海の誕生日の過ごし方の相談、ワインやフランス料理の感想、ピアスから芽美のファッションの話、渋谷のクラブでのハロウインイベントの話、美咲から紹介された新しい女友達の話、彼女達の恋愛事情からクラブナンパの話など、たっぷりと話し込んだ。

 食後のデザートとコーヒーを終えると午後11時近い。おしゃれなレストランでの美味しい食事とお酒に素敵な花とプレゼント、ご主人様との楽しいおしゃべり。それらの効果で気分が昂ぶっている芽美は、もう、早く帰宅して、ご主人様に荒々しく犯してほしくてたまらない。発情し熱のこもった瞳でご主人様を見つめる。

「さて、これからどうしようか、メグ?」
 早く帰ってセックスしましょう、と言いたいがマゾ牝奴隷妻の返事はこう決まっている。
「ご主人様のお望みのままに♡」

―それにご主人様だって私と同じように思っているはずだもの。帰宅して早くあのお部屋で私を犯したいって考えているにちがいないわ―
 ご主人様が自分を見つめる視線に欲情がこもっていることに気がついていたから、芽美はそんな風に考えながら店を出てタクシーに乗り込む。

 ご主人様が運転手に行き先を告げる。
「西新宿へ」
―あれ?―
 芽美の予想ははずれた。

 午後11時45分。芽美は西新宿の高級高層ホテルの一室の窓際に立って新宿の夜景を見下ろしている。驚くことに拓海の誕生日プレゼントはあれだけではなかった。このホテルの部屋を今夜と明日の夜の二泊予約しておいてくれていたのだ。

 ホテルの地上の乗降場でタクシーを降りた二人はそのままエレベーターに乗って高層階へ。深夜にも関わらず、すぐに声をかけてきたフロントスタッフにチェックインする旨を告げ、ポーターにバラの花束を持ってもらってカウンターへ行き、桐原拓海とご主人様が書いた下の欄に『桐原Ἡδονή芽美』と名前を書く。

 バラは花瓶に生けて部屋に持ってきてもらうように頼み、奥の専用エレベーターで客室へ。広い室内にはキングサイズのベッドが置かれ、奥の窓際には小さな応接セットと観葉植物。角部屋で2面に窓があり、さらに大理石使用のバスルームにも窓があり浴槽にお湯に浸かりながら外を眺めることができる。

 トイレや化粧直しを済ませ、喉が渇いたので炭酸水を注文。26本の赤いバラとかすみ草が生けられた大きな花瓶が先に届き、ベッドわきのサイドボードに置いてもらう。 続いて炭酸水が届く。ご主人様は何年も前に亡くなった奥様と一泊したことがあって、その経験を踏まえて今回は二泊にしたらしい。

「47階にフィットネスジムとプールがあって宿泊客なら無料で利用できるんだよ、でも一泊だけだと昼間入って楽しめないからな、明日は東京の景色を眺めながらプールでのんびり過ご贅沢を満喫しようじゃないか!」

 などとソファに座って炭酸水を飲みながら得意げに語るご主人様を尻目に、芽美は初めて宿泊する高級ホテルの室内をうろうろ歩き回りながらキャーキャーと歓声を上げていた。
 
 ようやく落ち着いて、座って炭酸水をゴクゴク飲むと、再び立ち上がる。しばらく夜景を眺めるふりをして何かを言おう言うまいか迷っている芽美だったが、考えがまとまったのか、くるりと拓海のほうに勢いよく振り向くと、潤んだ瞳を向け真剣な顔でこんな質問を発する。

「ご主人様は、どうして私なんかにこんなに尽くしてくださるの?」
「うん?ああ、お前に散々酷いことをしているからなぁ。その贖罪ってところかな?いつもムチばかりでは逃げられてしまうから、たまにはアメもあげないとねぇ?」
 軽薄な笑顔を浮かべて冗談めかしてそんな返答をする拓海。しかし芽美はその回答に満足せずにこう続ける。

「ううん、そんなことを尋ねているのではないわ。どうして私をご主人様のおっしゃる“マゾ牝奴隷妻”にしようとしたのか、そこを教えていただきたいの!ご主人様は何か大切なことを私に隠してる!それを知りたいの!」

 芽美の真剣な様子に拓海も立ち上がり、近づいて真剣な顔で会話する。
「それを知ることに、いったいどんな意味があるのかな?世の中には知らないほうがいいこともあるだろう?もしかしたら、今のこの関係が壊れてしまうかもしれないよ・・・ああ、それを望んでいるのかな?俺に犯されることにどうしても耐えられなくなって?」
「いいえ、逆ですわ。ご主人様との絆をより確かに、強固ものにしたい。そのためにご主人様の全てを知りたいのです。それにご主人様もよくおわかりの通り、今の私にとってご主人様に犯されることはかけがえのない悦びであり、他のどんなことにもまして大きな幸せを感じさせてくれる素晴らしい体験です。ほら、今だってもうこんな状態」

 そう言いながら、芽美はカーディガンを脱ぎ、白いネックレスをはずし、ボルドー色のミニワンピースを脱ぐ。下着はつけておらず裸だ。

 芽美が指指すその先では、乳首が弄ってくださいとばかりにピンピンとそそり立ち、秘裂からは蜜が漏れ太ももを伝って垂れ落ちている。そこから広がる濃厚なメスの匂いが近くに立っている拓海の鼻をつきオスの劣情を刺激する。

「ご主人様が見抜いておられた通り、私の本性は奉仕好きの淫乱なマゾヒストでした。その事実に薄々気がついていながら、それを嫌悪し目を背けひた隠しにして退屈な毎日を過ごしていた吉野芽美。過去のその私に、その事実をはっきりと自覚させて女の悦びを教えてくださり、あの儀式に挑戦し女神の称号を獲得できるだけの女の魅力と性技を磨き上げてくださったご主人様。Ἡδονήという新しい名前を与えてくださり“マゾ牝奴隷妻”として娶ってくださったご主人様」

 拓海のかばんからダイヤ付きの赤い首輪を取り出し嵌める。赤い12センチピンヒールを取り出し履く。スマートフォンでジムノペティを流す。香油”Tacki” for prudish Megの小瓶を取り出し身体全体に軽く伸ばす。その一つひとつの動作を終える毎に芽美の身体の震えが大きくなっていく。

「ただセックスだけをするのではなく、恋人のようにデートをしたり食事をしたりまめに連絡をとりあったり旅行に連れて行ってくれたりして楽しませてくれたご主人様。
 初めて一緒に迎えた今日の誕生日だって、人生で初めてのバラの花束と素敵なピアスをプレゼントしてくださって、素敵なレストランで美味しいワインと料理に軽妙なトークで楽しいひと時を過ごさせてくださっただけでなく、さらにサプライスでこんな高級ホテルの部屋をとってくださったご主人様」

 全ての準備を終えた芽美は窓の反対側を向いて拓海に正対して真っ直ぐに立つ。

「そんなご主人様のことを想いながら、こうして犯される準備をしているだけで」

 そこで身体の震えを堪えるように両腕で己を強く抱きしめる。窓から差し込む月明かりに照らされた芽美の身体は美しかった。

「ほら、もう絶頂してしまいそうなくらいですわ。こんなわたくしが、いまさらどんな秘密を隠していようとも、ご主人様を裏切ったり、ご主人様から離れたりすることは絶対にありませんわ!だって・・・」

 手を拓海のほうへ伸ばし、こう続ける。
「だって、わたくしは!ご主人様を!心の底から!愛してしまっているのですから!」

 言い終わると感極まって泣きながらご主人様の胸に飛び込み両腕を背中に回して抱きつく。拓海はそれをしっかりと受け止め自らの両腕を芽美の背中に回し強く抱きしめ返し耳元でこう囁く。

「お前の気持ちはよくわかった。俺もそろそろ全てを打ち明ける頃合だと考えていたんだ。7日の俺の誕生日に最後にお前の気持ちを確かめさせてもらったらそうするつもりだった。だから、もう数日だけ待ってくれないか?」

 芽美から返事は聞こえなかったが、胸に押し付けられている頭が上下に動く。同時に、拓海のスマートフォンからハッピーバースデーの音楽が流れ出す。午前0時。

「あらためて誕生日おめでとう、芽美!そういうわけだから、このことはひとまず置いておいて、今日まる一日、このホテルでお前の26歳の誕生日を楽しく過ごそうじゃないか。それから、実はもう一つとっておきの誕生日プレゼントがあるから受け取って欲しいんだ!」

 自分を勇気づけるように大声を出したご主人様に驚いて顔を上げる芽美。その泣き濡れた双眸を見つめ拓海は唇を奪う。そして告白する。
「実は不本意ながら、俺もお前と同じ気持ちになってしまったようだ・・愛してる」

「えっ?」
 芽美はキスに応えることもせず、何を言っているのかわからないのか怪訝そうな顔をする。一秒、二秒、三秒・・・。十秒後、意味がようやくできたのか、信じられないとばかりに目を大きく見開き両手をぐっと握り締めて、大輪の花のような笑顔を浮かべて言った。
「最高の誕生日プレゼントをありがとうございます、ご主人様♡」

 続けて、芽美の身体が硬直したかと思うと、イクと小さく呟き、呆けた目をして大きく三度ブル、ブル、ブルと身体を痙攣させ股間から愛液がしとどに溢れ出る。ご主人様の「愛してる」の言葉だけで絶頂を迎えたのだ。そんな風に調教されきったマゾ牝奴隷妻の従順で可愛い姿に満足し、褒美に髪をなでながら拓海は心のなかでこんな風にうそぶく。
―まあ、お前を喜ばせるためのリップサービスだがな―

 『嘘』といわず『リップサービス』と表現するところには、拓海の自分の気持ちへの疑念があった。
―もしかしたら自分は本当に芽美を愛してしまったのかもしれない―
 そんな思いを振り払おうと気持ちを嗜虐的に切り替えて芽美に宣言する。

「さあ、いよいよお待ちかねの時間だよヘドネー。Copulation(交尾)!」
「はい!ご主人様のお望みのままに犯してくださいませ!」

 喜色を浮かべた芽美は、絶頂の余韻で小さく震える身体を動かして背を向き四つん這いになって頭を床につけて両手を背中で交差させ尻を掲げる。淫獣としてのデフォルト体位。ハァハァと熱い吐息を吐き淫蜜をとろとろと垂れ流し『Ἡδονή 』と焼印されれた大きく美しい尻を淫らに打ち振ってご主人様を誘惑する。

 拓海はそんな奴隷妻を焦らすようにゆっくりと服を脱ぎ丁寧に畳むと、準備万端の肉壷に猛りきった怒張を遠慮なく力任せに打ち込む。

「ハッ、アーーーーーーーーーーーーーーーンッ!!!♥」
 待望の大好物をようやく下の口に与えられて、高級ホテルの室内に、厚い壁をはさんだ隣室や玄関ドアの向こうの廊下にまで届きそうなほど大きな淫獣の絶頂の嬌声が響き渡った。
 
 その夜の芽美はすばらしくご機嫌で、淫らで、底なしの性欲と果てしのない体力で夜明けに拓海が降参するまで自ら騎乗位で腰を振って何度も何度も求め続けた。

 拓海が目を覚ますと既に目覚めていて半勃ちのペニスを舌でペロペロと舐めていた。室内、レストラン、ジム、プール、バー。どの場所でもいつも以上に拓海にべたべたとまとわりつき、いちゃいちゃし、甘えた。

 拓海が何かやろうとするとご主人様は何もしなくていいですわ、全部私がやりますからと言って服の着脱から下のお世話、それこそ箸の上げ下ろしに至るまで面倒をみた。
 
 祝日のためかに日中のプールにもそこそこたくさんの客がいたが、拓海が持ってきていた白い小さなビキニ水着を着た芽美はそんな客を無視して拓海と水中で際どいプレイに走ってしまい注意されるほどだった。

 朝食・昼食・夕食とホテル内のレストランで精のつきそうな料理を選んでたらふく食べた拓海の精力は、その夜も限界まで芽美に搾り取られてしまった。

 へろへろにされていつの間にか眠りに落ちていた拓海が目覚めた時刻は午前11時過ぎ。キングサイズの広いベッドであるにもかかわらず、精液まみれの身体をピタリと寄せて幸せそうに寝入っている芽美を慌てて起こし、チェックアウト期限の正午ぎりぎりに部屋を後にした。
 
 外へ出て拓海が見上げた空には雲ひとつなく、“黄色い”太陽がさんさんと照っていたとかいないとか。

 気力・体力がともに不足し、その日すなわち11月4日(金)の午前だけでなく午後も仕事をサボってしまった関係で、拓海はその週末のほとんどを仕事に当てた。

 週明け7(月)の拓海の誕生日当日も、朝から夕方の6時まで普通に仕事をした。

 それから芽美の手料理と誕生日ケーキを食べて、風呂に入って芽美に身体を洗ってもらいマットプレイとマッサージで癒されると、芽美にハロウィンでのセーラー○ィーナスのコスプレをするよう命じて、お茶を飲みながら着替え終わるのを待つ。

 着替え終わった芽美に、日中届けられていた車輪付きの金属製の箱にしゃがんで入るよう命じ、蓋をして引き取りにきた引越し業者風の男に引き渡すと、自分も身だしなみを整える。マゾ牝奴隷妻となった芽美の忠誠心を確かめるための秘密の乱交パーティ会場に参加するためだ。
 

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