時刻は深夜0時過ぎ。
ゆっくりと時間をかけてディナーを終えた二人は壇上に近づいて儀式の様子を眺めている。二人以外にも、数組のカップルと犯す順番を待つ男達が近くで儀式を眺めている。AVを見たことはあるが、他人のセックスを生で見るのは芽美にとって初めての経験だ。 気恥ずかしかったが、周囲の男女が平然と眺めている様子を横目でみて、動揺を隠し落ち着いているふりをする。
壇上では花嫁が騎乗位で腰を振っている。女の腰の動きに合わせて男も腰を使っている。女の口からは後背位の頃には聞かれなかった嬌声が漏れ出している。
フォッ!♡ フォッ!♡ フォッ!♡
壇の下では椅子に座った花婿が苦痛に顔をゆがめながらも彼女をじっと見詰めている。花嫁もまた、他の男のペニスで感じてしまっていることへの後ろめたさ、悔しさ、哀しみなどが複雑に入り混じった表情で花婿をじっと見詰めている。
ピピッ、ピピッ、ピピッ。
3分経過したことを表すアラームが鳴り、新婦が腰を上げて男が立ち上がり、新たな男が横たわって新婦がそのペニスに手を添えて己のヴァギナに迎え入れる。新婦が腰を使い始めると男の手が小ぶりの乳房とクリトリスに伸び、腰を柔らかく円を描くように動かす。新婦の嬌声が高まる。
フォォッ!♡ フォォッ!♡ フォォッ!♡
新婦の瞳から力が失われようとしている。快楽に意識を奪われつつあるようだ。
「Inès (イネス )!」
そこへ新郎が女性の名を叫んだ。新婦はハッとして意識を取り戻し、熱い吐息を吐きながらも瞳に力が戻る。その様子をみていた周りの男女から声援の拍手が起こる。芽美も釣られて拍手をしたあと、何かを言いたげに拓海を見上げる。
「どうした?」
「なんだか、想像していたのと違って戸惑っちゃって・・・」
「どこが違っていた?」
「花嫁を犯す男達は、もっと、下卑た感じだったり、見ている女達も、侮蔑のまなざしで見てたりするのかと思ったら、男も女も、なんていうだろう・・・さっきの拍手みたいに応援と同情の篭もった視線で、感情移入して温かく見守っている感じ?」
「それはそうだろう。女を犯す役割の男は全員がこの儀式の経験者だし、ここで首輪を嵌めている女もみな儀式を経験しているからな。この会場にいる男女でこの儀式を経験していないのはオブザーバーの俺達だけだ。コンパニオン達も皆一度は経験している」
「だから犯されている花嫁の気持ちも、犯される花嫁を見守るしかない花婿の気持ちにも共感できるっていうこと?」
「そうだ」
「でも、どうしてわざわざこんな酷いことをするの?結婚式なのに?」
「結婚式だからこそ、やるんだよ」
「意味がわからないわ」
「そうだな、ちゃんと説明しよう。ちょっと場所を変えようか?」
拓海はそう言うと、芽美の手を引いて式典スペース左手の砂浜に向かって歩き出す。芽美は、壇上で花婿が花嫁に口移しで水分補給をしているのを横目に見ながら引っ張られていく。水分補給は当然のように熱いフレンチキスへと移行している。
「結婚式というのは、神に対して永遠の愛を誓うという形式をとっていることが多い。しかし現実には、不倫や浮気、離婚をしてしまう夫婦が多数存在する。それは何故か?結婚式が形式にすぎず中身を伴っておらず、己の行動を抑制したり相手の行動を束縛したりする力を持たないからだとこの国の創設者は考えたんだよ」
「あー、例のイギリス貴族様ね」
「そう。彼は、どうせあとで体験する男女が多いなら、いっそのこと婚姻儀式の中で合法的に、男には愛する女を奪われる苦しみと愛する女を奪う快楽を、女には愛する男に裏切られる悲しみと愛する男を裏切る快楽を体験させてしまえばいいという結論に達した。その方向性に沿って具体化され修正を加えられた結果が『試練の儀』というわけだ」
「そう言われると理にかなっているような気もするけど、現実には色々な建前があるから普通は実現不可能なのよね」
「建前というのは重いファクターだからなぁ。この儀式が続いているのも建前と本音の両方を満たしているからだと思うぞ。建前は、愛する女を奪われる苦しみ又は愛する男に裏切られる悲しみを先に味わい、不倫や浮気を防ぐため。しかし本音は、男は結婚式を挙げたばかりの花嫁を花婿の目の前で犯すという背徳的な快楽をなんども味わえる。女は複数の男に輪姦されるアブノーマルなセックスをテアーに認定されない限り何度も経験できる。しかも、ここがポイントだが、定められたルールに従って“合法的”に、だ。自分はルールに従ってやむなく輪姦している、輪姦されているだけだと言い訳できるのが精神的に大きい」
「ということは、この儀式は本来の目的を達成していなかったりするの?」
「その答えはこの様子を見ればわかるんじゃないかな?」
目の前の砂浜では、3分間の挿入を終えた男が女を犯している。壇上では射精にまでは至らないから欲求不満を解消しているのだ。男は花嫁を犯したことで荒ぶっていて、女も輪姦された過去を思い出して激しく燃え上がっているのか、感極まった大きな嬌声が静かな波音をかき消すように時折響く。
「みんな、隣にいた女を犯しているみたいね・・・」
「そのとおり。ここでは真理愛のような女もたくさんいるが、男は皆自分が連れて来た女、つまり自分が調教した牝奴隷か奴隷妻を犯している。実際にここだけでなく、結婚後の追跡調査の統計分析でも、離婚したカップルは通常の結婚式を挙げたカップルより有意に少ないそうだ。つまり実際に効果がある、ということだな」
「そうなんですよねー。この国には結婚前も結婚後も複数の異性とセックスしてはいけないなんて決まりも常識も皆無なのに、なぜか皆さん真面目で困っちゃいますよ。というわけで私とエッチしませんか?」
そこへ真理愛がやってきた。どうやら暇を持て余しているらしい。
「真理愛か、ちょうど良かった。お前に頼みがあるんだ」
「なんですかー?私は高いですよ~」
「これから明日の朝まで芽美の通訳をやってくれないか?明日の儀式を受ける前に経験者の女から直接話を聞いておいてもらったほうがいいと思うのだが、英語が流暢に話せるわけではないから通訳をお願いしたい」
拓海はそう言って真理愛の胸の谷間に100ドル紙幣を突っ込むと、こう言い残して反対側に設けられているバースペースへと去っていった。
「俺も経験者の男から参考になりそうな話を聞いたり明日の打ち合わせをしたりしてくる。あとは任せたぞ真理愛!」
「芽美様は明日の夜『牝妻降誕の儀』をお受けになるのですね、ドキドキしますねっ!」
拓海の姿が遠くなり、どうしたらいいのか途方にくれている芽美に真理愛が親しげに話しかける。
「ご主人様のご意向ではそうみたいなのだけど・・・・」
自分の気持ちがはっきりしていなくて芽美は言葉を濁す。
「迷っておられるのですか?」
「だって、100人もの男に公衆の面前で犯されるなんて、怖いもの」
「そうですか?私はそれが楽しみで儀式を受けたようなものですけどね~。でも自分が変わってる自覚はありますから、他の経験者に話を聞いたほうがいいでしょう!私もここ長いんで割と顔が広いんですよ。こちらへどうぞ!」
真理愛が案内する方向へ歩きだす芽美。
「真理愛さん、英語が話せるなんて凄いですね!」
「いえいえ、英語なんて普段使えばすぐできるようになりますから。要は慣れですよ・・・あっ!」
真理愛が突然右方向に走り出し、外国人カップルに話しかけるとこちらへ連れてくる。二人ともほぼ全裸で女性のほうは太目の赤い首輪をつけている。この時間になると、芽美のようにドレスをちゃんと着ている女はほとんどおらず、むしろ芽美のほうが恥ずかしくなる。
「去年儀式を受けたドイツ人のエーリヒご主人様とエイレイテュイア奴隷夫人ですわ。3分の儀式を終えてこれから砂浜でイタすご予定のところを無理やり捕まえてきちゃいました。エイレイテュイア様は、見事テアーの身分を獲得したお方ですから、参考になるお話が聞けると思いますよ♪芽美様が明日この儀式を受けるからアドバイスをいただける方を捜しているのでご協力いただけませんかとお願いしたら喜んで応じてくださいました。私が通訳するので、なんでも質問してみてくださいね!」
「グーテンたーく?」
ドイツ人と聞いてなんと言っていいかわからず、思わずこう言ってから「あ、今は夜だった」と焦る芽美。
「こんにちは」
するとエーリヒがこう返答したあと、真理愛にドイツ語で何かを言った。真理愛が日本語に翻訳。
「といっても今は真夜中だけどね。夜は長く時間はたっぷりあるからなんでも聞いて、ですって」
ドイツ人もジョークみたいなこと言うんだと新鮮な気持ちの芽美。お言葉に甘えて尋ねてみる。
「儀式を受けたことを後悔していませんか?」
芽美は真理愛の仲介で、赤い首輪の女、つまりテアー身分の女達から儀式の感想を聞いた。白い首輪の女が5割、黒い首輪の女が4割で、赤い首輪をしている女は10人程度にすぎなかった。感想は皆ほとんど同じだった。
―儀式を受けたことは後悔していない、儀式で認められてテアーになるのが夢だった―
―『試練の儀』で背徳的な快感に襲われたときには女としての業の深さを感じ、ご主人様への贖罪の気持ちが心に残り忠誠心が高まった―
―『初夜の儀』で“マスターハズバンド”となったご主人様とのセックスは空前絶後の快感―
―『祝福の儀』で皆に祝福されたときの幸せは格別―
―同じ性癖を持つ仲間達の前で特別な関係が公に認められて奴隷妻となれて幸せ―
『刻印の儀』のことは怖くてしっかりと尋ねるとができなかった。何とか、遠まわしに尋ねてみても、皆一様に表情を堅くして一瞬目をそらせると、すぐに話をそらせて『初夜の儀』の素晴らしさを笑顔で語り出してしまうのだ。
ただ1人だけ、「経験すればあなたにも女の業の深さがわかるわよ」と言って切ない表情を浮かべる女がいた。その言葉のニュアンスと表情は芽美の心に深く刺さった。
夜の浜辺は海風で冷えるため、かがり火がたくさん焚かれていた、そのせいか芽美はやけに喉が渇き、真理愛が運んでくるカクテルを何倍も飲んだ。酔うと自分だけ服を着ているのが恥ずかしくなり裸になった。裸になると自分だけ首輪をしていないことが酷く恥ずかしかった。
やがて試練の儀が終わった。壇上の花嫁はやりきったすがすがしい顔をしている。全員が席に戻り服を着る。芽美も服を着て最遠列の席に戻ったが拓海はいなかった。拓海の代わりに真理愛が通訳や解説等のサポートをするために着席した。
3時30分。審判の儀。
壇上で神官が静まり返った会場内でイネスの身分を厳かに発表する。「θεά(女神)」。
歓声と拍手が巻き起こる。花嫁は歓喜のあまり涙ぐみ、花婿は満面の笑みを浮かべる。
花婿が花嫁に赤い首輪を嵌める。
4時。刻印の儀。
花嫁が壇上で正面を向いて四つん這いになっている。口にはボールギャグが嵌められていて両脇にいる屈強な男が腰をしっかりと押さえて固定している。その尻肉に、花婿が焼印を押し付ける。
ジュウウウゥ!
肉が焼ける音が聞こえた気がした。花嫁は体をプルプル震わせて絶頂すると、そのまま失神した。その様子を黒い首輪、白い首輪を嵌めた女達が羨ましそうに見ている。
「アレをどうしてみんな羨ましそうに見ているの?」
「だってあれはテアーと認定された証ですもの。刻印されているのは小さな今日の日付とご主人様がお決めになられたお名前ですから。イネス様は本日、レイモン様の奴隷婦人Ἀφροδίτη(アフロディテ)様として生まれ変わったのです。今日が彼女の新しい誕生日ですわ」
5時。初夜の儀。
列席の客たちが周囲をぐるりと取り囲んでいる壇上で、ウェディングドレスを介添のコンパニオンによって再度着せられた花嫁が尻肉の痛みに耐えながら花婿の男根を正常位で迎え入れている。芽美は明日の儀式予定者ということで壇のすぐ近くからその様子を見させられている。
花嫁は花婿にぎゅっと抱きついて情熱的にキスをする。花婿が腰を動かすと花嫁は口を離し大声で嬌声を叫び続けてあっというまに絶頂に達する。花婿は体位を変えて花嫁を責め続け、花嫁は1時間の間に幾度も絶頂に達した。花婿は最後に後背位で自分もイった。
長時間の試練に耐え、“マスターハズバンド”となった男への忠誠と愛情を貫き、“セックス-スレイブ-ワイフ”として最高の称号とここで赤い首輪をつける権利を獲得し、ご主人様から新たな名前を与えられ、その名を彼の所有物である証として刻印され、女の憧れであるウェディングドレス姿で、自分を羨む女達と自分を欲しがる男たちの眼前でマスターハズバンドから犯され、至福の絶頂に導かれ全ての慎みを捨て去りメスの嬌声を叫び続ける。
その花嫁の恍惚とした幸せそうな、どこか自慢げにも見える表情を、芽美は羨望のまなざしでじっと見つめる。
と、花嫁が芽美に目を向けた。芽美にはその視線が「羨ましいでしょうけれど、あなたには無理よ」と挑発しているようにも「この幸せをあなたにも分けてあげたいわ、だからあなたも覚悟を決めてね」と後押ししているようにも感じられた。
その自信に満ちた視線を受け止め切れずに目をそらすと、壇上の花嫁を自分と同じような羨望のなまざしで見つめている女達が目に入った。特に、白と黒の首輪をつけた女達の視線は熱かった。
―ああいう風になりたいと思っている女は私だけじゃないんだわ―
芽美の逡巡はこの瞬間霧散した。
6時。祝福の儀。
会の終わりだ。列席者は疲れきって壇上で死んだように横たわっている花嫁に言葉をかけると壇の脇に立っている花婿に会釈をして会場を去っていく。花婿は一組毎にしっかりと頭を下げて参列のお礼を言っている。芽美も一言「お疲れさま、私もがんばるわ」と声をかけて式典スペースを後にする。
銅鑼の音が8回、夜明けの浜辺に響く。
ゴーン!ゴーン!ゴーン! ゴーン!ゴーン!ゴーン! ゴーン!ゴーン!
会場の外では拓海が待っていた。
「覚悟は決まったかい、メグ?」
「はい、ご主人様!でも一つだけお願いがあるの・・・」
芽美の心中は朝日に照らされた雲ひとつない青空のように澄み切っていた。拓海はにっこりして芽美の頭をぽんと軽く叩き、二人は今夜に備えて眠るために、仲良く手をつないで水上コテージへ戻っていった。