夜8時。
二人は島の東部の浜辺付近に設けられた屋外パーティ会場内にギリギリで到着した。芽美が着替えるの手間取ったためだ。拓海はタキシードのままだが、芽美はパーティ用の可愛らしいピンク色のミニのカクテルドレスに着替えている。
会場は木の柵で三重に覆われ、外部からは中が全く見えないようになっている。中の音も海や空へ抜けてしまい、木の柵と砂に吸収され内陸側には届きにくそうだ。
木の扉の開閉を3回繰り返して入場する。入るときに、招待状とパスポートの提示を求められただけでなく持ち物検査までされて、芽美は驚いた。
「ずいぶん厳重なのね?」
「今夜の式には選ばれた人物しか入れないからな」
「VIPがいるの?どこかの偉い人とか」
「偉いということはないが・・・式の進行中においおい説明するから。早く着席しないと始まってしまうぞ!」
「あ、はい!」
中は最も海に近い場所に四つのかがり火で仕切られた式典スペースがあり、そこを中心に木製の長方形のテーブルと椅子が半円を描いて放射状に並べられている。各テーブルに二人、つまり1組のカップル毎に着席するようになっている。男性は概ねタキシード、女性はみな露出多めだが上品なドレスを着用しオシャレに着飾っている。
ざっとみて100人以上が座っている。席の間は距離があり薄暗くてよく見えないが、どの女も首になにかをつけているようだ。芽美にはそれが首輪のように見えた。見える範囲ではその色は全て黒か白。
二人はその最遠部―前から6周目―の右側に着席すると、そのタイミングを見計らっていたかのように、斜め後方から日本語で話しかけられる。
「いらっしゃいませ、桐原様、若奥様。お飲み物は何になさいますか?」
芽美が振り返ると、そこには結婚式の時に「キス!、キス!」とはやしたてた日本人の若い女の一人が妖艶な笑顔を浮かべて立っている。やや釣り目の気が強そうな巨乳美女だ。カチェーシャで髪をまとめメイド服を着てメニューを差し出している様子からパーティコンパニオンと思われる。
驚くことに、白い首輪を嵌めていて、ブラウスからは乳房が露出し股下数センチのフレアミニのスカートの下から下着をつけていない股間がチラチラ見える。
白砂へと伸びるすらりとした生脚の足元は素足で派手なペディキュア。マニキュアもメイクも色気重視の派手なものだ。
両乳首に金色のリング状のピアスが嵌められている。左の乳房の上部には何か文字が書いてあるようだが、未知の言語で芽美には読み取れない。露出している乳房も全身がこんがり日焼けしていて健康的で活発な印象を醸している。
「元気そうだな、真理愛(マリア)」
「はい、ご主人様もお元気そうですね!」
「初めて会った頃は、たしかまだ中学3年生くらいだったかと思うが、大きくなったものだな」
拓海は親しげにそう話しかけると胸を軽く揉む。芽美は真理愛という女が拓海のことをご主人様と呼んだこと、二人が親しげなことに苛立ちを覚える。
「あんっ♡、おかげさまでFカップまで育ちました♪それだけじゃなくて感度も抜群ですよ♪よかったら後で試してみてくださいね♪それでご注文は何になさいますか?」
真理愛は胸を揉まれても動じることなく甘え声を出し、注文をとる。
「強めのさっぱりしたカクテルを二つ頼む」
「だめですよ、夜は長いんですからご主人様は弱いのにしておきます」
真理愛が更に親しげな会話をして芽美をますます苛立たせる。芽美が思わず口を開こうとすると機先を制して半歩下がり、改まった表情と落ち着いた声で言う。
「それでは、ごゆっくりおくつろぎくださいませ」
そして、きれいなお辞儀をして素足のまま白砂の上を足早に去っていった。
「ずいぶん親しそうでしたね?それにあの格好?これってほんとに結婚式なんですか?」
「お前の疑問はもっともだ。だがもう儀式が始まる。最初は口を開くわけにはいかないからあと30分ほど待て。いいなメグ!」
「・・・かしこまりました、ご主人様」
周囲のテーブルからじろりと睨まれ、芽美は小声でそう返事をして、とりあえず口をつぐんだ。
ゴーン!
低音の銅鑼の音が会場内に重々しく響きわたり、式典スペース内の白い布が掛けられた高さ1メートル・縦横2メートルほどの壇の上に、白地に赤紫の縁飾りの古代ローマのトーガ風の衣装をまとった神官のような壮年の男が登壇する。芽美にはその男は自分達の“結婚式”を行なった神父に似ているような気がした。
「ーーーーーーーー」
静まりかえった会場内に神官の声が響く。マイクを使ってはいないようだが、風向きのせいなのか、観客席最奥列の芽美たちにもよく聞こえる。芽美には何を言っているのかよくわからない。拓海に何語か質問すると、ラテン語で決まったセリフを言っているとのこと。
神官の声が終わると、壇上に二人の男女が登壇する。男女とも西洋人。
男は純白のタキシード、女はマーメイドラインのウェディングドレスを着ている。どうやら二人は結婚したばかりのようだ。20代とみられる新婦は背の高いスレンダーなプロポーションの美しい金髪女性。新郎はやや年輩のハンサムな紳士。二人とも知性と品位にあふれる顔だちをしている。
驚くことに、花嫁は無骨な太い鉄製の首輪を嵌められている。
「ーーーーーーーー」
神官が仰々しく言葉を発する。
「ーーーーーーーー」
(ーーーーーーー)
「ーーーーーーーー」
(ーーーーーーー)
「ーーーーーーー!」
(ーーーーーーー!)
新婦が観客席に向かってフランス語で長々としたセリフを述べる。それが逐次英語に通訳されているが、やはり芽美には理解できない。
「なんて言っているのかしら?」
「これまでの経緯と自分の気持ち、この儀式に臨む決意を披露しているんだよ。ごく簡単に言うと『ご主人様に調教され、オーガズムの快感とセックス奴隷として仕える悦びを教え込まれた。今の私はそのことに大きな幸せを感じている。この儀式を乗り越えて全てをご主人様に捧げ、奴隷妻となって一生尽くしたい』という内容だね」
「ええっ!?冗談でしょう?」
「冗談ではない、あとで説明するからしばらく黙っていなさい!」
「・・・はい・・・」
壇上で新婦がセリフを言い終える。銅鑼が2回鳴らされる。
ゴーン!ゴーン!
神官が再び仰々しく言葉を発する。
「ーーーーーーー」
状況が飲み込めずに戸惑う芽美を置きざりにして儀式が進行していく。
真理愛と同じような格好をした西洋女メイドが登壇しウェディングドレスを脱がせて回収する。代わって屈強なアラブ系とみられる男二人が登壇し、新婦の両手を頭上で縛ると台中央から伸びる鉄棒から吊り下げる。足がぎりぎり台につくかつかないかという絶妙な高さだ。
台の端に立っていた神官が右手をゆっくりと上げる。それを合図に観客席の男が前のほうから順番に台上に登り、新婦に近寄って顔や身体をしげしげと眺めている。その中に拓海たち最外周部の男達は入っていない。
100人が新婦の身体をチェックし終わり席に戻ると、銅鑼が3回鳴らされる。
ゴーン!ゴーン!ゴーン!
屈強な男二人は新婦を吊り下げているロープを緩めると、裸のまま台の上で観客中央席に向かって四つん這いの姿勢をとらせる。手錠はかけられたままだ。台の隅に立っていた新郎も台から降りて新婦の斜め前の椅子に座り、心配そうな目でじっと新婦を見つめる。
それを見て神官が言葉を発する。
「ーーーーーーーー」
花嫁のほうを向いている壇上の四つスピーカーからBGMにGymnopédie が流される。最前列右手の男から順番に登壇し、芽美が驚くことに新婦を後背位で犯し始める。同時にメイド姿のコンパニオンが各々の担当テーブルへドリンクとディナーの給仕を開始する。驚いているのは芽美だけだった。
拓海たちのテーブルにも真理愛がカクテルドリンクとスープを運んできた。芽美はカクテルを一口飲み、カラカラに乾いていた喉を潤し拓海に問う。
「・・・これはいったいなんの儀式なの・・・?」
その声はかすれたような聞き取りにくいものだったが、拓海には想定内の問いかけだ。
「これはご主人様に調教されてきたセックス奴隷が公式な奴隷妻となるためのイニシエーション(通過儀礼)だよ。『牝妻降誕の儀』と名付けられている」
「どうして、こんな人前で?」
「人前婚て聞いたことないかな?列席者に対して誓う方式の結婚式。あれと一緒だよ」
「でも、あんなふうに何人もの男にレイプされるなんて!まわりの人たちもどうして普通に食事したり歓談したりしているの!?女性だってたくさんいるのに!?」
興奮して大声で手を振り乱す芽美。こんなことはオブザーバー席ではよくあることなのだろう、先ほどと違って誰も言動を気に留めていない。
「順番に話すから、まずは最後まで俺の話を食事しながらじっくり聞くんだ!いいな芽美!?」
「・・・かしこまりました・・・」
芽美は渋々引き下がる。真理愛が茹でた野菜とゆで卵のサラダを運んできた。台上では花嫁の輪姦が続いている。芽美は食欲などまるでわかない一方、拓海はもりもりと平らげ、芽美に説明を開始する。
「そもそも、ここがどういう場所なのか、ということから説明したほうがわかりやすいだろうな。この島は、己の女をマゾのセックス奴隷として調教する性的嗜好の男と調教された女が集まる“国”だ」
「えっ、“国”?」
「そう、ここはモルディブではなく、『voluptas (ウォルプタース)』という名前の別の国なんだよ。パスポートをよくみてご覧?」
芽美がパスポートをバッグから取り出してよくみると、『voluptas』という名前の入国スタンプが小さいながらも確かに押されている。
「で、でも…こんな国の名前聞いたことないわよ?」
「ああ、独自の司法権・行政権・立法権を有しているものの、それ以外の全てをモルディブに委託している被保護国だからな」
「それって国と言えるの?」
「たしかに承認している国は少ない。ほとんどがモルディブが加盟している英連邦に属する小国家だ。だがイギリス、インド、オーストラリアが承認していることが大きい」
「イギリスが?」
「詳しいことは知らないが、この国の始まりは、1960年代にイギリスから独立するときに尽力したイギリスの大貴族の政治家が仲介の代償として買い取った島らしい。その時に自らの影響力を駆使して、この国をイギリスおよび英連邦加盟国に承認させたということだ」
「ふーん、凄い政治力持っているのね…それで、どうしてわざわざそんなことをしたの?まさか、今あそこで行なわれているようなことをするためってこと?」
「まさにその通り。彼もSM・調教という特殊な性的嗜好の持ち主だったのさ。由緒ある貴族には多いらしいが」
ドリンクを一口飲み続ける。
「彼の見るところ、SM・調教という性的嗜好を有する愛好家は英国内だけでも大勢存在していた。しかし、公にすることのデメリットから、そのことを秘密にし個人的な趣味に留めている、あるいは極めて限定された人間関係内でしか公にしていない愛好家がほとんどで、そうした趣味は、小さな地下のクラブや貴族の屋敷でこそこそと披露される“非合法”で“アンダーグラウンド”な文化とみなされていた。彼はそういう実情に我慢ならず、全世界的にみればそうした愛好家は相当の人数に上るはずとの予測から、世界各国のSM・調教の愛好家が集まり“合法的”かつ“オーバーグラウンド”にその性的嗜好をさらけ出せる場所を作ろうとしたんだよ」
「なんていうか・・・変わった人だったのねぇ」
「ああ。精力的で極めて有能な人物だったそうだから。天才には変人が多いとか、英雄色を好むとか言われるタイプの人物だったのだろうね。じっさいに蓋を開けてみると、世界中から愛好家が集まり“建国”は大成功を収めた。その中には各国の金持ち、権力者、エリート層の人物が大勢いたからね。そうした人々の支援によってこの国のインフラ、法律、経済的基盤、対外関係諸々が整備され、今では揺るぎないものとなっている」
「なんだか信じ難いお話だけれど、現に今その場所にいるのよね・・・」
「そうさ。歩き回って話をしたりするのは自由だから、あとでそうしてみるといい。俺の言ったことが真実だとわかるだろう」
「うん・・・それで、今行なわれているアレはなんなの?」
壇上では新婦が数分の短い間隔で延々と男に犯され続けている。
「あれは、その過程で築き上げられてきた調教者と被調教者との婚姻・評価制度だ。さっきも言ったが、『牝妻降誕の儀』と名付けられている」
「めす、づま、こう、たん、の、ぎ?」
「そうだ。この国に集まった調教者の男達の多くは自分のセックス奴隷を自慢したい、みせびらかしたいという願望を抱き実際にそうしたのだが、客観的な基準がないため口が上手いほうが勝ったり、優劣を競ってトラブルになることさえあった。そのために対策として生み出された奴隷を評価しランク分けする制度だ」
芽美が話に聞き入っているのをみて話を続ける。
「また調教した女に愛情を持つ男、愛した女を自分好みに調教する男も多く、彼らからの要望として、妻を迎える普通の結婚式ではなく“奴隷妻”として迎えるにふさわしい婚姻儀式が望まれた。その結果出来上がった制度が『牝妻降誕の儀』だ」
「・・・・・」
芽美は無言。
「『牝妻降誕の儀』に於いて牝妻候補者は『容姿』『淫乱さ』『従順さ』および『知性』『貞節』の5つの観点から評価され、4つの身分のどれかが与えられる。
まず、『容姿』『淫乱さ』『従順さ』がどれか一つでも合格水準に未達の場合は、『παιδίσκη(パイディスケー、下女 )』という最低の身分と認定される。男にとってセックスするに値しない女、つまり洗濯・掃除・家事等をやらせるだけの家政婦ということだ。
この島にそういう仕事で雇われた女達はこの身分とみなされ、性的な対象とした男に厳しい処分が下される。逆に言えばこの身分で守られるわけだ。しかし、この儀式を受けた結果としてパイディスケーと認定されることは酷い屈辱で恥ずべきこととみなされていて、そういう認定をされることは殆どない」
拓海はここで一瞬表情を歪めたが、すぐに淡々と先を続ける。
「『容姿』『淫乱さ』『従順さ』の全てが合格水準に達していた女は『知性』『貞節』のレベルに応じて次の3つの身分のどれかがに認定され、身分を示すものとして異なる色の首輪を嵌められる」
「両方ともレベルが低ければ『πόρνη(ポルナイ、街娼)』。首輪の色は白」
「知性レベルが高くても貞節のレベルが低ければ『ἑταίρα(ヘタイラ、高級娼婦)』。黒い首輪」
「両方ともレベルが高ければ『θεά(テアー、女神)』。赤い首輪」
「ちなみに『παιδίσκη(パイディスケー、下女 )』の首輪は茶色だ」
「ポルナイと認定された女は、この国の国民男性に求められれば、いつでも・どこでも必ずセックスに応じなければならない。この島以外の世界中どこでもだ。男はその報酬として女に1回2時間あたり200ドル相当の金額を支払う」
「ヘタイラの場合には、その報酬が1000ドル相当に上がる。ただし報酬は1日あたりで、その街の案内や、食事をともにするなどのセックス以外のデート義務を含む」
「テアーの場合には、報酬が1回1日10000ドル相当に跳ね上がるだけでなく、男を気に入らなければ断る権利を有する。テアーと認定される女の調教者への貞節は非常に高く、主人からの命令がない限り男の要求に応じることは実際にはほぼ皆無だ。自分が抱かれたい男がいれば、その男に抱かれる命令をだすように調教者へ要求することも可能だが、これもあまり利用されないと聞いた。テアーと認定された女は調教者の“マゾ牝奴隷妻”となることをこの国の法律で正式に認められ、国民男女から大変な尊敬を受ける」
「『牝妻降誕の儀』を受けて身分が決まってしまっても、1年経過すれば再度儀式を受けることができるから、その身分が一生固定するわけではない。
現在、この国の国民になるには、男の場合は、男性国民の複数の推薦が必要で、さらに調教した女を1人以上連れてきてこの儀式を受けることが条件だ。結婚式を挙げるかどうかは男の意思に任されていて省略されることも多く、その場合は『国民選定の儀』として実施される。女の場合は、男に連れてこられてこの儀式を受けさせられ、身分の認定を受けた者だけが国民になれる」
じっと聞き入っていた芽美が疑問を口にする。
「・・・女がこの国の国民になるメリットなんてないと思うけど・・・」
「女は国民になるのではなく、国民に“ならされる”と言ったほうが正しいな。それにメリットはあるんだよ。
テアーに認定されれば王侯貴族のように扱われるし、難易度の高い女を口説こうとする国民男性が貢物を持って次々にやってくる。それに応じるかどうかは本人の自由だ。
ヘタイラと認定されれば、テアーほどではないが相応の尊敬は受ける。断る権利がないということは、それを言い訳に浮気セックスとデートを楽しめるし、しかも1000ドルという収入額は大きい。声を掛けてくる国民は身元のしっかりした魅力ある男ばかり。性病検査と避妊を義務付けられているし、もし夫や恋人がいる場合にばれても上手く誤魔化してくれるから、何の気兼ねもなく刺激的なセックスを楽しめる。
ポルナイも同様さ。断れないことを言い訳にして、魅力があり安全で上手な男と気軽に大好きなセックスを楽しめて、お小遣いまでもらえるのだから」
「・・・国民男性が国民女性を見つけるにはどうしてるの?ネットの秘密のページを見るとか?」
「ウェブサイトはセキュリティを破られて情報が露出する危険性があるから掲載はしていない。地元に国民の女がいるかどうかは唯一この島にある写真付きの国民リストで調べることができる。旅行で他の国へ行ったときには電話でこの国の担当者に確認するんだよ。そして女への連絡も電話だ。男が女に自己紹介し、その女が身分認定された日付と身分、そのとき与えられた名前を伝える。
例えば真理愛はたしかポルナイ認定されたはずだが、彼女に俺が電話をするとするとこうなる。
『voluptas の桐原拓海ですが、2008年12月11日にお生まれのポルナイの真理愛さんですか?』というようにな」
「真理愛さんて8年も前からずっと娼婦をやってるの!?可愛そうに」
「いや、ここではそういう価値観は通用しない。男が金を払ってセックスすることも、女が金をもらってセックスすることも、男女共に不特定多数の異性とセックスすることも、この国の民にとっては法的にも道徳的にも認められた正当な行為だ。
アイツはセックスが大好きでこの道を選んでいる。中学生の頃からセックスの快感を覚えて不特定多数の多くの男とセックスするために援交に嵌まっていたんだが、それではリスクが大きいからとここを紹介されて喜んでここを訪れた女だぞ。
あいつの胸に描かれていた文字は πόρνηだが、それも自ら望んだことだ。容姿端麗で頭の良いアイツをマゾ牝奴隷妻にと望む男は多いしテアーにもなれる女だが、若いうちは多くの男とカジュアルにセックスを楽しみたいということで断っているばかりか、ヘタイラだと報酬が高すぎて選んでくれる男が減るということで、あえてポルナイとなったそうだ。都内でも何度かここの国民である外国人旅行者と楽しそうに行動しているのを見かけたし、本人もとても幸せだと言っている」
「そうなんだ・・・拓海ご主人様も彼女を指名したことがあるの?」
「いや、俺はまだここの国民ではないから指名する権利はないんだよ」
「それにしては顔見知りのようだけど・・・?」
「ここにはオブザーバーで何度か来たことがあるからな。数少ない同じ日本人だから、必然的に仲良くなったというだけだから、そんなに嫉妬するな」
「嫉妬なんてしてませんっ!それで、認定って具体的にはどんな風にされるの?」
「そうだな、話をもどそう。順番に説明するから、この紙を見ながら黙って聞いてくれ」
芽美はA5の小さい紙を渡される。そこには次のようなことが書かれている。
<牝妻降誕の儀>
17:00 1)婚姻の儀(日没)
20:00 2)宣誓の儀
20:15 3)披露の儀
21:00 4)試練の儀
04:00 5)審判の儀
04:30 6)刻印の儀
05:00 7)初夜の儀
06:00 8)祝福の儀(夜明け)
「最初は婚姻の儀。日没前の時刻に母なる海に愛を誓う。これは俺達も実施済みだ」
「次が宣誓の儀。あの女性がしたように、列席者にマゾ牝奴隷妻となる決意の言葉を述べる」
「3番目が披露の儀。鉄柱に吊られて裸体をさらし、肉体に問題がないことを示す」
「そして今まさに彼女が受けているのが試練の儀。花婿の目の前で100人の男に犯される。後背位、立位、騎乗位、正常位、座位の5つの基本体位で各20人、各々の体位でヴァギナとアヌスをそれぞれ10人に犯される。コンドームをつけてのローションをたっぷりつかったセックスだ。胸を揉むなどの愛撫や声をかけることは男に許されているが、キスや口を使わせることは禁止されている。アナルセックスをするのだから腸内洗浄、つまり浣腸を事前に済ませておく必要がある。1人3分の短い挿入時間で射精もしないが、それでも100人だ。順番にやれば1時間15人程度の速度で、ざっと7時間はかかる。この間、花嫁は飲食できないが、花婿が口移しで水その他を飲ませることが推奨されている。脱水症状になりかねないからな」
「それが終わると審判の儀。事前に提出されている書類や調教レポートおよび試練の儀までの結果を踏まえて身分が決定され、身分に応じた首輪を花婿によって嵌められる。さっきも言ったようにポルナイが白、ヘタイラが黒、テアーが赤だ」
「6番目の刻印の儀。これはテアーと認定された女だけに許される“特権”だ。テアー、つまり女神にふさわしい新たな名前を与えられ、それを身体に“刻印”される。ヘタイラとポルナイにも、その階級に応じた新しい名前が付与されるが、身分が変わることを考慮して刻印されることはない」
「7番目は初夜の儀。壇上で列席者が見守る中、花婿が正式に奴隷妻となった花嫁を犯す」
「最後が祝福の儀。奴隷妻と夫に列席者達が一組づつ祝福の言葉を述べて去っていく。これが終わる頃には朝日が昇っている。以上が儀式の内容だ」
「最後に身分認定の基準と方法についてだが」
芽美は無言で拓海に続きを促す。
「繰り返しになるが、認定の観点は『容姿』『淫乱さ』『従順さ』および『知性』『貞節』の5つ」
「『容姿』『淫乱さ』『従順さ』については合格か不合格かの判断だが、その基準は緩い」
「『容姿』については好みのタイプは人それぞれということもあり、普通以上の容姿で心身が健康であれば合格」
「『淫乱さ』は試練の儀のときの反応を見るが、この儀式に出るような女ならまず大丈夫。全然濡れずにローションを使いまくるとか、痛みにずっと顔を歪めている等の問題がない限りはまず合格。むしろ感じすぎて我を忘れないように気をつけたほうがいい」
「『従順さ』については宣誓の言葉の内容等で判断するが、この儀式に出る女なら、途中で逃げ出しでもしない限り問題はない」
「重要なのは事実上3つの身分を左右する『知性』と『貞節』だ。セックス好きの淫乱な女や娼婦からスカウトされた女には欠けていることが多い要素だからな。ちなみにこの国には女を国民にスカウトする組織がある」
「まず『知性』。これには大学卒業程度の一般教養の知識と語学力。それに話し方や礼儀作法といったマナーも含まれる。式の前日に英語、数学、一般教養(歴史・地理・経済・自然科学)の3科目の試験を受け7割以上正解する必要があるが、大学を卒業していれば免除される。マナーについては、この島に到着してからの行動からチェックされていて、粗野な言動・暴力的な言動・差別的な言動をする者は大幅に減点される」
「そして『貞節』。実はこれが最も難しい項目だ。女を犯す100人の男が1人1票持っていて80点以上で合格なのだが、全員が女を悦ばせる挿入テクニックに習熟しているから、1人3分といえども感じないでいられるほうが難しい。感じることや嬌声を上げること自体は全く問題ないのだが、感じすぎて肉欲に溺れたり、眼前で見守っている花婿のことを忘れてしまうようなことがあれば大幅な減点となる。だからこそ高得点をとってテアー認定された女は、男からも女からも非常に尊敬される」
「これで説明は、いや、ひとつ補足をしておこう。試練の儀は長時間にわたるため、この間は自由に席を離れて歓談したり会食したり、気に入った異性とセックスすることが許されている。お祝いの席で金銭のやり取りは無粋だから報酬は無しでな。花婿を誘惑することも自由。ただし、この中から外へでることは許されず、1時間に1、2回は犯されている花嫁の傍へ行き身近に観察することを推奨されている。オブザーバーである俺達にも同様の権利が保障されている」
「説明は以上だ。なにか質問はあるか?」
拓海の説明が終わったのを見計らって、真理愛がメイン料理を運んでくる。魚のムニエル。このあとに肉料理、パスタ、デザートとコーヒーと続くが、長丁場なのでゆっくりとお出しするとのこと。
拓海が2人分のドリンクのお代わりを注文し、空になった拓海の皿とグラス、氷が溶けてすっかり温くなった芽美のグラスが下げられる。
芽美の前には手をつけていない前菜が残されている。ふと壇上を見ると、花嫁の体位は立位へと変わっている。拓海の話を飲食を忘れて夢中で聞いているうちに、1時間30分近くが経過していた。
芽美の喉はからからに乾いていた。真理愛が持ってきたカクテルドリンクを奪うようにしてゴクゴクと飲み干す。思ったより強いカクテルだったが、もう一杯同じものを注文し、真理愛が再度運んできた2杯目を一口飲むと、輪姦されている壇上の花嫁を見ながら、とうとう拓海に確認をとる。
「私はあの儀式に参加させられるのね?」
「そういうことだ」
芽美の頭には、自分がそれを断ることができるなどという考えが全く浮かんでこなかった。それは芽美が、その場の異様な雰囲気に飲まれていたからだろうか?拓海の調教の成果だろうか?それとも、芽美自身がそのことを望んでいたからだろうか。
答えを明らかにするのが怖くて芽美は目の前の前菜を口に運ぶ。味はまったくわからなかった。